垂直落下式サミング

Returner リターナーの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

Returner リターナー(2002年製作の映画)
3.5
ゴジラで話題の山崎貴監督の初期作をみる。
未来からきたという不思議な少女ミリから、未来を救うため仕事を依頼されたリターナーのミヤモト。しぶしぶ同行することになるが、未来で起こるという戦争の発端となるのが、自分の追っている男と同一人物であると知る。利害関係の一致したふたりは、未来をかけた決死の戦いに身を投じていく。
強い殺し屋なのに、ミヤモトめっちゃチャラくてよかった。金城武の大袈裟に演じる表情の動きかたとか、ロン毛で眉のキリッとした風貌も相まって、自己防衛おじさんみたいな画の強さのあるキャラクターだ。
樹木希林が情報屋で、その辺の道端にいそうな婆さんの役をしている。どちらかというと上品なおばあ様のイメージで、小汚ないババア役で出ているのは晩年の『万引き家族』くらいしか知らないけど、2000年代に出演した本作でも、ちゃんと汚ババアが似合ってたからすごい。そういう日もある、ロックンロール!
日本映画の予算規模で、ハリウッドアクションっぽいことを真っ正面からやろうとしている愚直さは、とてもいい。ワイヤーワークやVFXもふんだんに取り入れて、ロケ地やセットもショボくみえないように無国籍風の世界観に統一してある。仰け反り銃弾よけで、もろマトリックスのパクリみたいなのも微笑まえましい。
潜入するにあたって、鈴木杏演じるミリがボロボロの服を着替えるところが大好き。戦争で人が死にまくっている未来では、こんな経験したことあるわけないんだもんな。美容室で髪を洗ってもらったとか、ここで着替えていいってとか、いちいち報告してくるから、恥ずかしいからやめてくれって目を伏せるミヤモトに共感するのと同時に、曇った顔が晴れていく様子が健気で愛おしくって…。
総評として、とても可愛い映画だった。山崎貴監督という人が、昔からからずっと「やりたいこと」のビジョンが明確にあるタイプの映画人だということがわかったから、今後は周囲の評価に流されず、自分の目でみていこうと思う。