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ファイアーライト 情炎の愛のtakのレビュー・感想・評価

3.4
ソフィー・マルソーが演ずるのは、代理出産の契約をした女性エリザベス。顔を隠した男性と懐妊のために数日を共に過ごすことになった彼女。暖炉の炎で照らされて初めて相手の男性の顔を目にする。少しずつ打ち解けていく二人。そして無事に出産を終えた彼女は産まれた娘を引き渡す。しばらく経って娘と再び会いたいと望むようになった彼女は、娘の父親であるチャールズの屋敷を突き止め、住み込みの家庭教師として働くようになる。二人の関係を病身の妻に明かさないように言われるエリザベス。そして、過保護に育てられわがまま放題の娘ルイザをしつけなおそうと、素性を隠して向き合うことになる。

女性向けの映画だと方々で聞いていたけど、まさに母性のお話ではある。映画の舞台は19世紀のイギリス。この頃、きつーいコルセットが必要なコスチュームプレイの出演作が続いていたソフィー。本作は「女優マルキーズ」や「ブレイブハート」と違ってかなり地味な役柄。しかし「結婚したら自由はないの!女は囚人なのよ!」と叫ぶ芯の強さはこれまでと同様。暖炉の炎からの光(ファイアーライト)の中では時が停まり、何でも言える、何にでもなれる。その炎の前で語り合ううち、頑なな娘が態度を改めていく場面がいい。

されど母と娘の関係だけではない。父親と息子の関係も描かれている。愛人と公然と付き合う父親を「快楽だけを求める父親は尊敬できない」と反発していた息子チャールズ。その父親が彼の様子をエリザベスに尋ねる場面がある。父親は、自分の素行に文句を言う息子が、自分と違って女性経験が少ないことを悪く言う。「快楽を知ってから言え!と言ったのだがね。」そこで、チャールズと妊娠するために数日を共に過ごしたエリザベスは「彼は快楽を知ってますわ」と答える。そのひと言で安心する父親の姿。ここも印象的な場面だった。

全般的には筋だけ追ったような荒削りさが感じられる。でも映画賞を受けた撮影は見事で、寒々とした風景やソフィーの素敵な表情を美しく撮っている。男の愛情を確認し、雪降る空に向かって声をあげる彼女の笑顔。その笑顔を見るだけで僕は幸せになれる。
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