荒野の狼

地球の静止する日の荒野の狼のレビュー・感想・評価

地球の静止する日(1951年製作の映画)
5.0
本作の原題は映画のオリジナルとリメイクの両者とも The Day the Earth Stood Still。邦題は前者が「地球の」後者が「地球が」。これは宇宙人が地球の活動を30分止めてしまったオリジナル作品からの題名だが、このエピソードはリメイクでは描かれていないので、リメイクでは意味不明のタイトルになってしまった。
オリジナルの「地球の静止する日」は、鑑賞前は1950年代から乱発された安っぽいB級SF映画と思っていたが、内容は(DVDのメイキングで製作者が語っているように)A級の古典映画で映画史に語り継がれるべき作品であった。
リメイクのメッセージが環境保護であるのに対し、オリジナルでは核戦争の防止のための世界平和(目標達成のために人類が国ごとのエゴを捨てて世界が結束し変わらなくてはいけないという点は同じ)。
オリジナル版に対する私の誤った先入観は、美女を抱えた巨大ロボットの宣伝ポスターによるところが大きいが、実際の映画のこれに似たシーンでは、美女はブロンドでカクテルドレスではなく、黒髪でスーツを着ており、ロボットは身長231㎝のロック・マーティンが着ぐるみに入っていたので240㎝ほど。
リメイクとオリジナルのどちらを先に見ても楽しめるが、有名なキラトゥ・バラダ・ニクトのセリフがリメイクではどこで使われるか注目(当初は入れない予定がキアヌ・リーブスの要求で前半と後半で挿入)。
オリジナルは当時としては多額の製作費をかけたというだけあって円盤もロボットも安っぽい感じはせず、宇宙船の船内も含めて現代の目から見てもリアリティは高い。ちなみに円盤のデザインは建築家のフランク・ロイド・ライトが行った(クレジットされていないが、円盤好きの彼の作ったギリシャ正教会は円盤を思わせる造形)。リメイクと違ってサイドストーリーはまったくなく、いきなり宇宙船の到着となり観客は引き込まれていく(メイキングでロバート・ワイズ監督が、どんな映画の導入部も観客をまず引き込んでいくことに力をいれたと語っている)。
本作の宇宙人は、キリストと関連する部分がある(名前のカーペンターはキリストの職業の大工であったり、死から復活するところは似る)が、メイキングによると、保守から反対があったので、宇宙人が自力で死から復活できるのかという質問の答えを、神のみができるという答えにして、妥協せざるをえなかったという。
主演、女優、子役、ロボット、監督、音楽、メッセージ、リアリティとどれをとってもオリジナルに若干軍配が上がる。
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