現在に至る全てのゾンビ作品の標準フォーマットと化したゾンビ三原則を”Night of the Living Dead“(1968)で生み出し、まさにゾンビをクラシックモンスターへと引き上げたゾンビの父George A. Romeroによる脚本監督作。
ゾンビ三部作にして最高傑作。
オープニングの荒廃した都会描写から素晴らしい!細かいところまで手が込んでる!世界観を表現するには、やはり微に入り細を穿つ仕事をしなければいけない。
死体にカニ?の大群がいたり、ゾンビの腕にタランチュラ?どデカイ蜘蛛を置いてみたり…極めつけはワニ!!本物のワニとか素晴らしい!
ワニを置く必要ないと思うけど…なんか迫力増すからOKでしょ?!っというノリのいい感じも伺える。
大量のお札が落ちていたり、荒廃した感じが素晴らしく表現されている。このシーンだけでも、相当な手間暇がかかっている。
○セミノル地下倉庫
給油もできる施設に降り立つ。
金網の外にはゾンビが蠢いている。
Terry Alexander演じる唯一のヘリコプターの操縦者である黒人のジョン。
Jarlath Conroy演じる唯一の無線技師であるビリー。
Lori Cardille演じる唯一の女性科学者サラ。
もともとの脚本では主人公サラは女ゲリラという設定でゾンビ版『インディ・ジョーンズ』だったらしい…その名残の所為なのか、どう見ても科学者には見えない。科学者然とした白衣を着てるシーンは1箇所しかなかったと思う…
なのでこのシーンに違和感が残ってしまう。
ジョン
「ヘリに給油を頼む」
サラ
「ダメ!暗くなってからよ。すごい数だわ」
ジョン
「タンクを空で置いとく気か?緊急発進できない」
サラ
「その時はその時よ!彼ら興奮してる!給油は夜よ!」
ジョン
「夜だって奴らは同じだ!燃料を入れろよ」
サラ
「彼らを刺激したい?」
ビリー
「日々増えてるぜ」
サラ
「撃ち殺すのね。さもなきゃ外に出ないで!姿を見せちゃダメ!」
…えと、これはどういう理論なの?
ゾンビは金網をクリアすることはできないんじゃない?うーうー言ってるだけでしょ?安全地帯だから、軍人たちは裸で本を読んでたり余裕で過ごしていたんでしょ?
別にここで給油するのは問題ないようにしか見えませんけど…夜じゃなきゃダメという、その根拠というかルールというか…具体例を示して欲しい。金網を突破される可能性があるとかならね、じゃ夜にしよう…は分かる気がするけど…
「彼ら興奮してる!」ってゾンビに冷静とか興奮とかの起伏はあるんだっけ?興奮してると、どんな効果があるの?その興奮を抑えるのに、姿を隠せばいいという理屈もよく分からないんだけど…姿が見えなければ冷静ってこと?
そんなことルールブックに書いてあった?
この映画の中の設定やルールを、キチンと提示してくれないと、そんなの後出しジャンケンじゃん?ということになりかねない。
それなら先ずは興奮と冷静のルールを見せる必要があると思うけど…これを後から後から小出しにされても、誰も対応できないよ。
【ゾンビ三原則】
・人間の肉を食べる
・頭を破壊されるまで死なない
・噛まれた人間もゾンビ化する
基本三原則はこの3つだと思うけど…
○研究室
Richard Liberty演じるローガン博士がゾンビを解体しまくっている。
特殊メイクアップアーティストのTom Saviniの素晴らしい職人技の数々。むき出しの内蔵のクオリティや、顔部分が失われた衝撃的な映像美。
博士
「彼らを動かすのは脳だ。血液も内蔵も必要ない。こいつはその例だ。(肋骨から腹部にかけて皮膚を開き丸見え。呼吸の度に腸まで連動してるのがまた素晴らしい!)脳と手足だけで生きている。見てみろ(手をゾンビの口元へ近づけると、ゾンビが噛みつこうとする)私を欲してる。食糧をだ。胃もなく消化もできんのにだ。本能だよ。奥にひそむ原始的な本能だ。腐敗は前頭葉、新皮質から始まり、中脳に及ぶ。だが、脳の中枢が腐るのは最後だ。それがR型複合体。有史前の爬虫類以来の脳の中枢だ。見ろ、R型複合体がないと、どうなるか…この死体から取り去ってみた(被さっている布をめくると、顔が全くない、脳の一部と首の骨しかない非常に気持ち悪い残し方をしている…)たとえ五感があっても、もう従順なものだ。本能は消されてる」
スイッチを弄ると、左手、右手と動く。
顔面のアップ!ヒャー!
すごいな…これは完全にカット案件だわ…
しかし、これはどうなってんだろう?首から上は机の下に隠してると思うんだけど…いや、でも角度的にキツイかな…?違う方法?
どうやって撮影してるのか分からない!!
これがクリエイティブだ!というお手本のようなシーンである。なんでもかんでもすぐCGに頼ってしまうのではなくて、そう見えるように技術で工夫することこそクリエイティブだろう。
博士
「運動機能はある。思考力もあるかも。これなら飼いならされる。我々の望むように行動させることが…」
何を言ってるのか…なんの実験なのか?
何を調べてるの?望むように行動させれば?それで根本的な解決にはならなくないか?ん?ならんだろ?
サラ
「15時間を超える大手術の成果がこれなの?もっと実用的な研究をすべきだわ」
実用的な研究?とは?
博士
「そのために必要なんだ。研究をやめる気はない。これがすべての根本だ」
サラ
「前には別の説を立ててたわ。それを実証しないで、また次を?現状の分析で時間を無駄に…原因を突き止めるべきよ。標本も切り刻みすぎよ!地上で彼らを集めるのはとても危険なのよ!」
この二人の会話はちょっと何言ってるかわからない。
OPEN THE BODYのゾンビが急に起き上がる!
腸が腹からこぼれ落ちる…うげぇ!最高!
○全体会議
無線技師のビリーを演じているジャーラス・コンロイはブシェミと、Mr.ビーンことローワン・アトキンソンにも似てる。味のあるいい顔してる。
Joseph Pilato演じるローズ大尉との話し合い。
博士
「どこへ行くね…私の標本を殺しても外にはウヨウヨいるぞ。全部やっつけられるかね?数字的に勝ち目はない。負けだよ。勝つには…飼いならすのだ」
え…!?その台詞で大丈夫?その台詞そのままそっくり自分に返ってくると思うけど…
銃の弾の数より多い、40万対1だと…
だから飼いならすのが勝ちだと…
その圧倒的な数のゾンビを相手に、あの手間の掛かりそうな手術を一体一体に施していくの?いったい全部やりきるのに何万年かかるの?
放射能廃棄並みに時間かかるんちゃうの?
それが唯一の勝つ方法には到底思えないんですけど…非効率甚だしい。
それなら冒頭で誰かが言った、無人島を見つけてそこで暮らす方が遥かに勝ちパターンな気がするけど…
金網すら越えられないんだから、海を渡ることは当然できませんよね?発生源がどこか分からないが、大陸さえ移動してしまえば、問題なくないか?コロナのように見えない敵なら、世界中に拡がってしまうのも仕方ないのかもしれないが…
ゾンビなんてひと目で分かるから、十分に対策取れそうなもんだけど…
発生源をすぐに隔離してしまえば、拡がらないでしょうが…金網で囲ってしまえばいいんだから、比較的ラクな戦いだと思うけど…
こういう導入部で、躓きたくないんだよね…
有無言わさずに、この映画での世界に飲み込まれていきたいのに…なんだかちぐはぐな説明されてしまうと、だんだん興味が離れてしまう。
せっかく内蔵描写とか最高なのに…
人間の余計なドラマ部分で推進力を停滞させてしまっている。
四の五の言わずに追いつめられていけばと思うけど…
ここに軍人と科学者に対する批判みたいなものが込められていると思われるが…
ローズ大尉
「飼いならすとは何だ?」
博士
「我々を食糧と思わせない。我々の思うように彼らをコントロールする」
ローズ大尉
「いつになったら見せられる?」
博士
「もうすぐだ…数週で」
いやだから…それが成功したとしても、全てのゾンビにそれをやり終わるのに何万年かかるのよ!って誰かツッコめよ!
○廊下
全体会議が終わり歩きながら…
サラ
「彼だって人間よ」
ジョン
「そうだ。人間さ。だから怖いんだ。ビリーは撃たれん。ただひとり無線のことが分かる。俺はヘリの操縦ができる。フランケン爺さんは十分に口が立つ。だが、残りのアンタたち…気をつけた方がいい」
サラ
「協力すれば心もほぐれるわ。方向が違うだけよ」
ジョン
「それが世界だろ!みな違う考えで生きてるのさ」
「それが世界だろ!みな違う考えで生きてるのさ」
改めて台詞にされると当たり前のことなんだけど、いいセリフ。ただ…文脈が合わない気がする。サラの台詞が違う気が…
○ゾンビ捕獲場
Anthony Dileo Jr.演じる精神薄弱したサラの恋人ミゲル。
ミゲルのミスでゾンビが逃げ出し腕を噛まれるミゲル。
その腕を瞬時に切り落として、タイマツで熱処理するサラ。
この腕切断シーンも凄い…素晴らしい!
話が進み…
○ゾンビ捕獲場
ゾンビのいるバリケードの外側へ放たれるビリーとサラ。
暗闇から現れたゾンビに襲われるサラ。
そこでビリーがゾンビの口へスコップを突き刺す。そのままグリグリやって口から上を吹っ飛ばす!これまた素晴らしい技術!
またもや、どうやって撮ってるのか分からない。
口から上をちょん切られたのが、転がっているのだが、目がキョロキョロ動いている。どうやってんの?
○外
ミゲルが貨物用の大きなエレベーターで地上に出て…金網の向こう側にいるゾンビ達を招き入れる。自分は犠牲になりながらも、エレベーターの上にゾンビが沢山乗ったタイミングで、エレベーターを下へ降ろす。
すると、その下には軍人達が勢揃い!
降りてくる荷台にめちゃくちゃゾンビが乗ってる画は圧巻!恐怖の瞬間!ここが一番のハイライトかな…素晴らしい!
こんだけ揃うと恐怖感も倍増するし、昼の光線でゾンビが全部丸見えだから余計に怖い!
畳み掛けるような後半の流れから素晴らしい!
前半に言っていたことも対して気にならなくなるほどに、見ている側も巻き込まれていく引率力がある。
細かいことを気にしないでアタマを空っぽにしてゾンビになったような気分でこの世界を愉しむのが正しい見方なのかな…
四の五の言ってスミマセン…。