ユウ

レオン 完全版のユウのレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
4.5
インターナショナル版ニキータというコンセプトで制作された本作。
映画好きで知らない人はいないと言っても過言ではない名作。

だが、後のフィフス・エレメントの制作費集めのための(監督的には)手を抜いた映画であるらしい。
作品ごとに大きく舞台設定を変更するベッソン監督にしては、前作であるニキータと地続きの世界観であり、内容もエージェントと殺し屋という似通った要素を持つことを考えると、その手抜きという言い分も理屈としてわからなくはない。

理屈としてはわからなくはないが……、これで手抜き?! バカなのか? リュック・ベッソンは? 手の抜き方を知らないのか、それとも手抜きという言葉をよく知らないのか? あるいは何らかの誤訳か!?


とにかく、間違いなく名作である。
件のフィフス・エレメントが、ジャンルからしてスペースオペラという人を選ぶ難点があるにしても、レオンの方が映画としての完成度は高いと感じる。

この完全版は、中年男性が年端もいかない少女と愛を語り抱擁を交わすというのはいかがなものか?という問題から重要なロマンスシーンの一部が削られてしまい、
それを皮切りに殺しのインストラクションシーン、
飲酒するシーンの削除と発展し、
「それじゃあ台無しだろう!」と業を煮やしたベッソンが海外上映版をこの完全版に差し替えて展開し、後に完全版がスタンダードになったという本来の意味通りのディレクターズカット。

そのおかげで上映版では唐突に始まり唐突に終わり過ぎた「リストの上から順に殺していけばいいんだろ?」的なスーザントラップ&リングトリックのシーンが、生々しさとの対比でより軽快で爽快感を伴うものとなっている。

そしてこの映画はレオンとマチルダの主人公コンビの魅力が極めて高いのはもちろんだが、悪役のスタンフィールドなしには語れない。
レオンが呵責に苦しみながらも殺し屋という悪の道を歩む純朴な心の持ち主であるのに対し、
スタンフィールドは良心なんぞドブに捨て、麻薬捜査官でありながら自らもドラッグに溺れる倒錯した人物。
ドラッグを服した後、何気なく仕事仲間に「モーツァルトは好きか?」と尋ね、相手の反応が芳しくないと見るや「演奏してやるよ」との朗らかな一声とともに相手からショットガンを奪い、マチルダの一家を惨殺する冒頭シーンは、モーツァルトどころかむしろ最高にロック!!

どこか達観し教養もあるがまだ幼く今すぐにでも未来が欲しいマチルダと、過去に囚われ精神的な成熟を迎えず今の自分を信じきれていないレオン。
相対するはエリートとして恵まれた人生を歩み、その今を常軌を逸して謳歌し快楽を貪るスタンフィールド。
これだけで、もうつまらないわけはないじゃないか。
ユウ

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