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ウディ・アレンの影と霧のみおこしのレビュー・感想・評価

ウディ・アレンの影と霧(1992年製作の映画)
3.3
1920年代、とあるヨーロッパの街で凄惨な連続殺人事件が起きていた。犯人を突き止めるべく、一人の平凡な市民クラインマンが駆り出され、街中を出歩くことになるのだが…。

今何かとネガティブな意味で話題のウディ・アレン監督作品。
殺人が蔓延るヨーロッパの裏町、という設定はまるで”切り裂きジャック”の世界だなと思っていたら、かの有名な『三文オペラ』も多用されていたりして、モノクロ撮影含むこの独特な空気感づくりはあえてなんだなと。さらに調べると、フリッツ・ラングに代表されるドイツ表現主義の作品もモチーフにしているようで、確かに主人公クラインマンが街を逃げ回る様子はラング監督の代表作『M』のピーター・ローレを彷彿とさせる演出。
…と、一見とっつきにくそうな世界観がありながらもそこはさすがのウディ節、ひょんなことから道を外れてしまった男の悲哀をコミカルに描いています。誰が見てもクスッと笑える会話劇は本作でも健在。主役のクラインマンを取り巻く人たちとのやり取りはどれも秀逸で、ウディ作品の中でもあまりお目見えしないジョン・キューザックやジョン・マルコヴィッチも参加していたりと観るべきポイントがかなり盛りだくさんで楽しめました。

ただ、前述の独特の世界観を体感できる、という意味では素晴らしい作品である一方で、画面全体のトーンが暗すぎてちょっと冗長になってしまうこともあって…。『マンハッタン』や『スターダスト・メモリー』のようなモノクロ作品も好きだけど、色彩豊かなウディ作品が好きな身としてはできればカラーで観たかったなと。
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