すずや

ピアノ・レッスンのすずやのレビュー・感想・評価

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)
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すごくジェーンカンピオンの色だな…と思った作品だった。彼女の映画を観ると凄く知的好奇心が刺激されて満足度が高くて、これも大好き。
冒頭、「声を出さないことは声がないことじゃない」というセリフに代表されているように、女性の”奪われる声”がテーマの物語。ピアノを奪う者。条件付きでそれを返そうとする者。女性が”声”なんて持つべきじゃないと思う者。いつもながらカンピオン監督の作品の描く”男性”像には容赦がなく、男性性に抑圧され、奪われ、踏みつけられる女性性を描いている。エイダがベインズに惹かれたのは正直物語の筋として納得がいっていない部分もあるけれど…彼女は「声を与える者」に与してほしくはなかった…
けど、この作品は同時に、のちの『パワーオブザドッグ』にも通じる男性性の悲劇の部分にも触れていて、ベインズに大きな怒りを持つスチュアートの苦しみが描写されていたのが凄く良かった。男性性支配は、巡り巡って男性自身をも大きく苦しめる…そのテーマが見えたのは個人的にとても好きだった。
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