スギノイチ

日本暴力列島 京阪神殺しの軍団のスギノイチのレビュー・感想・評価

3.5
全体的には「任侠映画の巨匠がとりあえず実録に着手しました」というようなハジケなさと無難さが漂う。
ただ、水場でヤクザが折り重なってドスを刺し合うシーンなんかは任侠の美しさと実録の猥雑さが融合した様な趣があるし、何よりも主人公の在日韓国ヤクザを演じる小林旭が格好良い。

昔、小林旭の代表作である『ギターを持った渡り鳥』を観た時は、ギターを持って歌いながら酒場へ入った小林旭に対してゴロツキ達が「あいつタダモノじゃねえ…」という感じにビビりまくるシーンで爆笑してしまった。
現代から観るとあんまりすぎるアウトロー描写に「確かにタダモノじゃねえよw」と笑ってしまったが、本作の小林旭は今観ても格好いい。
革ジャンを身に纏い、片手に拳銃。ギラギラと在日部落を駆け回り、抗争に明け暮れエネルギーを散らす。
拳銃を持ちながら殴る蹴るの殴打を加えた後に、とどめの0距離銃撃というスタイリッシュな殺しスタイル。
山口組(劇中では天誠会とかいう名前だが)の傘下に下った後も、殺戮チームとして活躍する。
ヤクザであり在日でもあり、さらに組織にも馴染めない多重アウトサイダーの生き様が魅力的。

『山口組三代目』を監督した山下耕作が、それに翻弄される在日ヤクザの苦悩を描いているのも面白い。
「彼は元々全てから破門されていたのだ…」というナレーションが象徴的。
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