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ルパン三世 くたばれ!ノストラダムスのbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
劇場版ルパン三世第5作

実質的な栗田貫一ルパンの初登板作品(山田康夫氏の代役として、ルパンを演じられました)。
本作鑑賞中、「やはり劇場版とテレビスペシャルは違う」という感覚を強く持ちました。

本作は、『女囚さそり』シリーズ等の監督・伊藤俊也氏と、アニメーターの白戸武氏のダブル監督により製作されてましたが、前作(『風磨一族の陰謀』)同様、制作のテレコム・アニメーションとゴタゴタを巻き起こし、以降テレコムが「もうルパンは作らん!」と言うほど、現場を紛糾させた作品のようです。
(テレコムは、TVスペシャル第19作『霧のエリューシヴ』にて、ルパン制作に復帰しました。)

また、冒頭述べたクリカンによる代役、即ち、山田康夫氏の体調不良の深刻化(アフレコ前に緊急入院)による『主人公声優の不在』という大変な事態に陥ったことも、本作を見る上では忘れるわけにはいきません。


作風、と言うよりも画面作りとして、非常に明るい、太陽光が燦々と降り注ぐ日中のシーンが多い印象です。
『ルパンvs複製人間』『バビロンの黄金伝説』『風磨一族の陰謀』は暗い画面が連続したため、劇場版ルパンでは最も明るい絵力を持っていたように思えます。
(『カリオストロの城』は明るいストーリーに思えますが、夜の闇や地下世界と、割と中盤は暗い展開です。宮崎監督流の「中盤にドン底まで落とす」が炸裂していることが影響していますね。)

本作は、後のTVスペシャル第11作『愛のダ・カーポ〜FUJIKO'S Unlucky Days〜』に先駆けて、記憶を失った不二子とルパンのロマンスが描かれます。
男を手玉に取らなくなった不二子に対し、普段のおちゃらけた態度を控え、胸に秘めた思いを出すルパンの姿が見れる珍しさ。
本作のルパンと不二子のキスシーンは、作中きっての名シーンです。


クライマックスのバカデカスケールは非常に絶妙な匙加減で作られており、「これは流石にありえんだろ」と「これくらいならあってもおかしくない?」のギリギリを突いてきます。

天災を引き起こすだの、世界を変えるオーパーツだの、わけわからんミラクル軍事兵器だのは、あまりにも現実離れしていて少々滑稽です。
しかし、「崩壊する巨大ビルの最上階から、下へ下へと落ちていく」くらいなら、全然ありだと受け入れられるレベルです。
(受け入れられるようにルパンイズムを洗脳教育されてしまった、というべきでしょうか?)

そこに行き着くまでの各シークエンスのアクションもハイクオリティで面白いですし、いやはや隠れた名作じゃないですか。

願わくば、TV放映をもっとバンバンしてくれればいいんですけどね。
"ビルが爆発炎上崩壊する"というじてんで、無理ですかね。9.11さえ無ければねぇ……。
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