ぽち

スモークのぽちのレビュー・感想・評価

スモーク(1995年製作の映画)
4.5
この物語に目をつけた監督の才能も認めるが、ほとんど脚本の勝利と言う作品だ。

原作の短編も読んでみたが、一層深みが増し感動できた。
今作は稀に見る「映画を観た後に原作」と言う順番が一番お勧めな作品。
ハーヴェイが物語を語るところが彼の演技も相まって素晴らしいのだが、読んだ後に思い出すと一層感動できる。

出演者も実に上手く演技の質が高い。これを観るだけでも楽しめる。

ただ一つゆるせないのが字幕。小説を読むと分かるが違う意味に取れるような下手な訳。
もしやと思い調べるとやっぱり誤訳、悪訳の達人と言われるあの人だ・・どうにかしてくれ!このおばちゃん。


ちょっと荒業を・・・・・

原作が凄く短いので貼り付けてみたが、果たしてこのレビュー何文字まで行けるか?
映画を観た後に読むことをお勧めする。

-------オーギー・レンのクリスマス・ストーリー------

この話を、私はオーギー・レンから聞いた。話の中でオーギーは ―――少なくとも彼が望むほどには―――あまりいい役回りではないから、 実名は使わないでくれと彼は私に頼んだ。 その点を除けは、落とした財布や盲目の婦人やクリスマス・ディナーにまつわる全て、 彼が私に語ったそのままである。

オーギーとはもう11年近い知り合いになる。彼はブルックリンのダウンタウン、 コート街に構えるタバコ屋のカウンターの後ろで働いていて、 そこは私の好きな小振りのオランダ葉巻が手に入る唯一の店なので、 足繁く出入りしている。 長い間、私はオーギー・レンのことをろくに考えもしなかった。 フードつきの青いトレーナーを着て私に葉巻と雑誌を売る風変わりな小男、 いつも天気とかメッツとかワシントンの政治家を茶化すネタを欠かさない ひねくれ者で皮肉屋、彼の印象はせいぜいその程度だった。

しかし何年か前のある日、彼はたまたま店の雑誌に目を通していてふと私の本の批評に 引っかかった。 批評に写真が添えられていたせいで彼はそれが私だと気付いてしまい、 私たちの関係は変わったのはそれからだった。 オーギーにとって私は単なる客の一人ではなくなり、別格の人間になった。 本や作家にそれだけの関心を払う人は珍しくないが、どうやらオーギーは自分のことを 芸術家だと考えているらしかった。 私の正体の秘密が割れてしまったいま、彼は私を同志であり親友であり腕を交わし合う 兄弟として認めるようになった。 正直言うと、これは私にはいささか煩わしかった。 そして、ほとんど必然の帰結として、俺の写真を見たくはないかと彼が私に 尋ねる時がやってきた。 彼の熱意と善意を鑑みるに、それを断る術はないように思われた。

私が何を期待していたのか、知る由もない。 ただ少なくとも、翌日オーギーが見せてくれたようなものではなかった。 店の裏手の窓のない小部屋で、彼は段ボール箱を開け全く同じ型の写真アルバムを 12個取り出した。 これは俺のライフ・ワークで、一日5分もかからないんだ、と彼は言った。 過去12年間の毎朝、彼はきっかり7時にアトランティック通りとクリントン街の 角に立ち、正確に同じ風景をモノクロ写真に撮り続けた。 このプロジェクトはいまや4千枚以上の写真に達していた。 アルバムは1年ごとになっていて、写真はどれも1月1日から12月31日まで 順番に整理されており、それぞれの下には几帳面に日付が記入されていた。

私はアルバムをぱらぱらとめくりオーギーの作品を見定めつつも、 どう考えればよいものか分からなかった。 これほど奇妙で困惑を誘う代物は見たことがない、というのが第一印象だった。 感覚を麻痺させる反復の応酬、何度も何度も現れる同じ街角と同じ建物、 過剰な映像の際限のない狂喜乱舞、それがこのプロジェクトの全容なのだ。 オーギーに言うべき言葉が何も思い浮かばないので、 分かったふりをして頷きながらページをめくり続けた。 オーギー自身はといえば平然とした様子で、満面の笑みを浮かべて私を眺めていたが、 私がそうやっているのを何分か見つめていたあと突然遮ってこう言った。 「それじゃ速すぎるよ。もっとペースを落とさなきゃ、わかりっこない。」

もちろん、彼の言う通りだった。見る時間をかけなければ、何も見えてきはしない。 私は別のアルバムを取り上げ、もっとじっくり進めようと心がけた。 細部にもっと注意を向け、天気の変化を観察し、 季節が移り変わると共に光の角度が変化するさまを目で追った。 やがて私は車の流れの微かなちがいが分かるようになり、日ごとのリズムを予想 できるようになった(通勤日の朝のざわめきや、それに比べ週末の静けさや、 土曜日と日曜日のちがい)。 そして少しずつ、背景の人々の顔を ―――オーギーのカメラの中で束の間の人生を生きる、仕事へ向かう通行人の 毎朝同じ場所の同じ顔ぶれを―――認識できるようになった。

いったん人々を見分けられるようになると、 私は彼らの態度、朝が変わるごとに移ろいゆく人々の佇まいを観察し始め、まるで 彼らを巡る物語が思い描けるかのように、人々の肉体に閉じ込められた目に見えない ドラマを見通せるかのように、表層の様子から人々の心境を見出そうとした。 私は別のアルバムを取り上げた。 もう退屈などしていなかったし、見始めたとき感じた不可解な気分もなくなって いた。オーギーは時間そのもの、自然の時間と人間の時間を同時に写真に収めていた のだと私は悟り、そのために彼は世界のちっぽけな片隅に足を据え、 自分で選んだその場の守衛となり進んで自身の住処とした。 オーギーは私が彼の作品に熱中するのを見つめながら、ずっと嬉しそうな笑みを 浮かべていた。 そして、まるで私の心を読んだかのように、彼はシェイクスピアの台詞を暗誦し始めた。「明日も明日もまた明日も」彼はひそひそと呟いた「時は小刻みに過ぎてゆく」。 私はその時、彼が自分のしていることを正確に理解しているのだと思った。

それが写真2千枚分以上も前のことだ。 その日以来、オーギーと私は彼の作品について幾度となく話し合ったが、 彼がそもそもどうやってカメラを手に入れ写真を撮りはじめるに至ったのかを 知ったのは、つい先週のことだった。 それが彼が私に語った物語の主題で、私はそこから納得する答えを得ようと いまだに四苦八苦している。

同じ週の少し前、 ニューヨークタイムズの男が私に電話をよこし、クリスマスの朝刊に載せる短編を 書く気はないかと訊いてきた。 私は衝動的にノーと言いそうになったが、その男は非常に感じがいい上に一徹で、 会話が終わる頃には私はとにかくやってみようと彼に言っていた。 しかし電話を切った瞬間、私はひどい動揺に陥った。 私がクリスマスについてどれだけ分かっているのか? 私は自問自答した。 依頼されて短編を書くということについてどれだけ分かっているのか?

私は続く何日間は、ディケンズやオー・ヘンリーやもろもろのクリスマス・スピリットの 大家の亡霊と戦いつつ、絶望にくれて過ごした。 「クリスマス・ストーリー」という言葉そのものに、偽善的でべっとりと甘ったるい 塊がどろどろと溢れ出すような、不愉快な連想を私は持っていたのだ。 クリスマス・ストーリーは良くてもせいぜい願望成就の夢物語か大人のための 御伽噺に過ぎず、私がその類のものを書くことを潔しとするなどもってのほかだった。 とはいえ、非感傷的なクリスマス・ストーリーを書けなどと提案してくる奴が いるわけもないだろう? それは言語矛盾で、不可能で、答えのない謎解きだった。 足のない競馬馬や羽のない雀を想像してもいい。

私は行き詰った。 木曜日、外気が頭をすっきりさせてくれることを願って私は長めの散歩に出かけた。 ちょうど正午過ぎ、在庫を補給しようとタバコ屋に立ち寄ると、いつもと同じく カウンターの向こうに立つオーギーがいた。彼は私に、やあ元気かと訊いた。 これといった考えもなく、気がつくと私は自分が抱えている問題を彼にぶつけて 気晴らしをしていた。「クリスマス・ストーリー?」私が話し終えると彼はそう言った。 「それだけのことか?俺に昼飯をおごってくれたら、今まで聞いたこともないような 最高のクリスマスストーリーを話してやるぜ。しかも一言残らず実話だと保証する。」

私たちは一ブロック歩いてジャックの店に行った。 そこは狭くて騒々しいデリカテッセンで、うまいパストラミ・サンドイッチと 壁には昔のドジャーズ・チームの写真が掛かっている。 奥のテーブルを見つけて食べ物を注文すると、オーギーは彼の物語を話し出した。

「72年の夏のことだった。」彼は言った。 「ある朝小僧が一人やってきて、店から物を盗み始めた。歳は 19か20くらいだったはずだが、あんなに哀れな万引き犯は今まで見たことないね。 やつは反対側の壁沿いにあるペーパーバックの棚のそばに立って、 本をレインコートのポケットに突っ込んでいた。 ちょうどその時カウンターは混みあっていて、最初やつのことは見えなかったよ。 だがあいつがやっていることに気づくやいなや、俺は叫び出した。 やつは野うさぎみたいに飛び出して、俺が何とかカウンターの後ろから抜け出したとき には、もうアトランティック通りを駆け抜けていた。 半ブロックほどやつを追いかけたが、そこで諦めた。あいつは道に何か落として いったが、どうせ俺はそれ以上走る気分じゃなかったから、 屈んでそいつを見てみたのさ。

「それはやつの財布だった。金は全く入っていなかったが、スナップが3つ4つと 運転免許証が入っていた。警察を呼んでやつを逮捕させることもできたはずだな。 名前も住所も免許証に書いてあったんだが、でも何だかやつが気の毒になったんだ。 所詮つまらんごろつきだったし、それに財布に入ってた写真を見たら、あまりやつを 怒る気持ちになれなくてな。 ロバート・グッドウィン。それがそいつの名だ。写真の一枚は確か、やつの母親か 祖母と腕を交わして立ってるものだった。 別のでは、9歳か10歳くらいのときのそいつ が野球のユニフォームを着てとびきりの笑顔で座ってる写真さ。 単に同情したってわけじゃない。 思ったのは、やつは今もうたぶん薬漬けだろうっとことさ。 ろくな未来のないブルックリンの哀れな小僧だ、どのみち屑みたいなペーパーバックの 一冊や二冊にこだわることもなかろう?

「それで、おれは財布を取っておいた。ときどきそれを送り返してやろうかという ささやかな衝動を感じたもんだが、先延ばしにしているうちに結局何もせずじまい だった。そしてクリスマスがやって来て、俺は何もすることがなく持て余している 有様だ。 いつもはボスが家に呼んでくれてクリスマスの日を過ごすんだが、その年はボスが 家族と親戚を訪ねてフロリダに行っていたんだ。 それで俺はその朝アパートに座ってちょっとばかり哀れな気分になっているんだが、 そのとき台所の棚においてあったロバート・グッドウィンの財布が目に入る。 俺は思うんだ、そうだ、いいことの一つでもしちゃいけないって理由はない、 それでコートを着て財布をじかに返しに出かけるわけだ。

「住所はボーラム・ヒルだった、集合住宅のどこかさ。 その日は凍るような寒さで、お目当ての建物を見つけるのに何度か道に迷ったのを 覚えてる。あそこじゃ何もかもが同じに見えて、違う場所に来たつもりが実は 同じ場所をぐるぐる回っているんだ。 とにかく、ようやく探しているアパートを見つけると俺はベルを鳴らす。 何も起こらない。たぶん誰もいないんだと思うが、念のためもう一度やってみる。 もう少し待って、諦めようと思ったちょうどその時、 誰かがドアへゆっくりやって来るのが聞こえる。 年老いた女の声でどなたと訊くから、おれはロバート・グッドウィンを探していると 答えるんだ。『ロバート、お前かい』年寄りの女はそう言って、 15個はありそうな鍵を開けてドアを開けるのさ。

「その女はどう見ても80は行っている、90歳かもしれない、そして俺が最初に 気付いたのは彼女は眼が見えないんだってことだ。 『お前が戻ってくると分かってたよ、ロバート。』と彼女は言う。 『お前がクリスマスにこのエセルばあちゃんのことを忘れるわけはないってね。』 そして彼女は私を抱こうとするみたいに腕を開くんだ。

「俺に考える時間はあまりなかったんだ、分かるだろ? すぐにでも何か言わなくちゃ ならなくて、何がどうなっているのかわからないうちに、自分の口から飛び出す言葉が 聞こえた。『そうだよ、エセルばあちゃん。』俺はそう言った。 『クリスマスだから会いに帰ってきたんだ。』 どうしてそんなことをしたのかなんて訊かんでくれ。自分でも分からないんだ。 たぶん彼女をがっかりさせたくなかったとかそんなのだと思うが、よくわからん。 ただとにかくそれがことの成り行きで、 年寄りの女はいきなりドアの前で俺を抱きしめ、俺も彼女を抱き返した。

「俺は自分が彼女の孫だとはっきり言いはしなかった。少なくともあれこれ 言葉は費やさなかったってことだが、暗に仄めかしはしたわけだ。 でも、彼女を騙そうとしたわけじゃない。二人でゲームをしようと決めたみたいな もんだな―――ルールを話し合う必要はなかったよ。 つまり、あの女はおれが孫のロバートじゃないってちゃんとわかっていたんだ。 彼女は年寄りでシミだらけだったけど、赤の他人と自分の血を分けた孫のちがいが わからないほどボケちゃいなかった。 でもそのふりをするのが彼女は楽しかったんだし、俺は他にもっといいやりかた がどのみち思いつかなかったから、喜んで彼女に付き合うことにしたんだ。

それで俺たちはアパートに入ってその日を共に過ごしたんだ。 アパートはすごくじめじめしていたが、言わせてもらえば、自分一人で家事をこなして いる盲目の女に何を期待できるかね? 彼女が私にどうしているかと聞くたびに、俺は嘘をついた。 おれはタバコ屋で働くいい仕事を見つけたと彼女に言い、もうじき結婚するつもりだと 言い、山ほど聞こえのいい話しをし、彼女はそれを全部信じているようなふりをした。 『よかったよ、ロバート』彼女はそう言って、首をうんうんと振って笑顔になった。 『あんたはきっとうまく行くといつも思っていたよ。』

「しばらくすると、えらく腹がすいてきた。家には大して食べ物がないようだった から、近所の店に出かけていろいろ適当に買い込んできた。出来合いのチキン、 野菜スープ、ポテトサラダを一山、チョコレートケーキ、ありとあらゆるそんな類の やつさ。エセルは寝室にワインボトルを2本こっそり取ってあって、おかげで なかなかまともなクリスマス・ディナーが出来上がったよ。 二人ともワインでほろ酔い気分になったのを覚えてるな、そして食事が 終わったあとはもっと座り心地のよいリビングに移って腰を下ろした。 小便をしたくなったので、ちょっと失礼と言って廊下の先のトイレに行ったんだ。 そこで、状況はぐっと変わることになった。 エセルの孫になりすましたおふざけだけでも充分イカレていたのに、そのあと俺が やったことはまったく狂ってたし、そのことで俺は自分を絶対許せないんだ。

「洗面所に入ると、シャワーの隣の壁沿いに積み上げられた6,7個のカメラの山が 目に入る。 新品の35mmのカメラで、まだ箱に入ったままの最高級品さ。 これが本物のロバートの仕業で、最近くすねたブツをここにしまってあるんだと俺は 気付く。俺は人生で一度も写真を撮ったことはないし、一度たりとも物を盗んだことは ないが、トイレに座ってそのカメラを眺めながら、そのうち一個を失敬して 自分のものにしようと決める。たったそれだけのもんさ。 その考えが終わりもしないうちに、そのうち一箱を腕の下に挟んでリビングに 戻ってくるんだ。

「席を立っていた時間は3分もなかったはずだが、その間にエセルばあちゃんは 座ったまま眠りに落ちていた。少しばかりキャンティを飲みすぎたんだな。 俺は台所に行って皿を洗ったが、その一仕事の間彼女は赤ん坊みたいに鼾を立てて ずっと眠っていた。邪魔する理由は何もないように思えたから、帰ることにしたんだ。 さよならのメモを残すこともできなかった、そもそも彼女は眼が見えないんだからな、 それでそのままその場を後にした。彼女の孫の財布をテーブルに置き、カメラをまた 手に取って、アパートから出て行った。それで話はおしまい。」

「そのあとまた彼女に会いに行ったことは?」と私は訊いた。

「一度だけ。」と彼は言った。「3,4ヶ月後のことだ。カメラを盗んだことに どうしても気が引けてね、一度も使いもしなかったんだ。 とうとう心を決めて返しに行ったが、エセルはもうそこにはいなかった。 彼女に何があったのか知らないが、アパートにはもう他の誰かが引っ越して来ていて、 その住人は彼女がどこにいるかわからなかった。」

「死んでしまったのかもしれないな。」

「ああ、たぶんな。」

「ということは彼女は最後のクリスマスを君と過ごしたわけだ。」

「そうだろうな。そんな風に考えたことはなかったよ。」

「良い行いをしたな、オーギー。彼女にしてあげたのは素敵なことだよ。」

「俺は彼女に嘘をついて、その上彼女から物を盗んだんだぜ。 それを良い行いだなんてどうしていえるのか俺にはわからんな。」

「君のおかげで彼女は楽しかったんだ。それに、カメラはどのみち盗まれたものだ。 相手が持っていたものを盗むのとは話が違うよ。」

「芸術のためなら何でも、ってことか、ポール?」

「そうは言わない。でも、少なくともあんたはカメラをいい目的に使っている。」

「そしてあんたはクリスマス・ストーリを手に入れたってわけだ、な?」

「ああ。」私は言った。「そう思う。」

私はしばし動作が止まった。それは顔に意地悪そうな笑いがニヤっと広がる オーギーをまじまじと見つめていたからだ。 定かではないが、その一瞬彼の目に宿る眼差しが謎めいて 何やら秘めたる喜びの輝きに満ちていたせいで、 彼が物語を丸ごとでっち上げたのではないかという思いに私は突然とらわれた。 私をかついだのかともう少しで彼に訊くところだったが、それを教えてくれることは まず無かろうとすぐに悟った。 私はまんまと騙され彼を信じてしまった、大事なのはそれだけだった。 一人でも信じる人がいるなら、真実でありえない物語など一つもない。

「君は大したものだ、オーギー。」私は言った。「おかげ助かったよ。ありがとう。」

「なに、どういたしまして。」彼は答えつつ、相変わらず憑かれたような輝きを目に 湛えて私を見つめていた。 「つまるところ、友人と秘密を分かち合えないんだったら、そんな友達に意味が あるのかってことさ。」

「どうやら君には借りができたようだな。」

「そんなことはない。ただ俺が言ったそのままを書けばいい、 それで借りなんか無しさ。」

「昼飯を別にすれば。」

「その通り。昼飯を別にすれば。」

私は微笑んでオーギーの笑みに応え、ウェイターを呼んで勘定書を頼んだ。
ぽち

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