左幸子の機敏な動きが素敵。どこか弥勒菩薩のような顔をしている。
秋田から出てきた初は、問題児扱いされている次男の寂しい気持ちをひとめで見抜く。そして彼の味方になり、イジメがあっても体を張って解決していく。
お母さんが、次男を彼女の価値観にはめようとするが当然上手くいかずイラつく。そこに愛情は感じられない。今ではネグレクトと呼ばれるだろう。
でも秋田まで両親が次男を迎えに行くところは良かった。雪の中何度も転びそうになりながら進むロングショットは、子どものためならどんなことがあってもかまわない、という必死さが伝わった。
この映画での初の故郷、秋田は桃源郷のように見える。囲炉裏に東山千栄子は丸く暖かい。
また生ハゲが出てくるシーンも健康的な儀式?あるいは大人が本気で取り組むゲームのようで充足感がある。本来、人はこのようなバカらしい祭りを真面目にやってうさをはらしたのだろう。
都会には本当の遊びがない。きゅうくつな規則や格差やイジメがはびこる悲しさだ。
唐突に物語は終わるのだが、もしも初がこのままあの家にいてもいずれ問題が起こったのではないだろうか。
都会を受け入れられない初が故郷へ帰っていくのを指をくわえて見るしかない。次男にとって何かを残したはずだ。それがどんなものかはわからないけど。