荒野の狼

サムライの荒野の狼のレビュー・感想・評価

サムライ(1967年製作の映画)
5.0
アラン•ドロン演じる『君たちはどう生きるか』。 どう生きるか? つまり、どう死ぬか?っていう映画である。
尤(もっと)も集団に埋没しているなら、死に方も生き方も問われる事はない、共同体に安住した時点で君という個は死んでいる。死んでいる君の生き方なんて誰も問わない。だからこそ君たちが見るべき価値のある作品だろう。「どう死ぬか」の「どう」は「道」に通じる、すなわちタイトルの「サムライ」は、そういう意味である。山本常朝の『葉隠』や新渡戸稲造の『武士道』なんかを持ち出す事はない、うわべだけならかえって邪魔だ。つまりこのフィルム•ノワールは、「一匹狼」はどう死ぬか(生きるか)を端的に描いたストイックな男の、生く事死ぬる事の「道画」なんである。
「サムライ」を旅先で観た三島由紀夫は、作品に感じ入ると共にドロンのカッコ良さに感化されて思わずトレンチコートを買ってしまったと述べている。笑っちゃうけど、後の彼の行動規範を鑑(かんが)みるに、ご自分をある部分でドロンのこの美学に重ねていた事は間違いない。彼は然るべき死に方で生きようとした。笑うのは簡単だが、簡単にできるものではない。男のストイシズム、ヒロイズムは、ある意味滑稽ではあるけれども、この映画を見て笑いながら映画館を出てくる男は多分いないだろう。
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