マヒロ

πのマヒロのレビュー・感想・評価

π(1997年製作の映画)
2.5
数学者のマックスは、自作のスーパーコンピュータで株式の予測をする仕事をしていたが、ある日そのコンピュータが216桁の謎の数字を表示して壊れたことをきっかけに、自身が追い求める「世界の全てを解き明かす数字」について周りの心配をよそに取り憑かれたかのように没頭していく……というお話。

ダーレン・アロノフスキー監督のデビュー作で、モノクロの画面や精神的に追い詰められおかしくなる主人公の様子などは『イレイザーヘッド』や『鉄男』を彷彿とさせるところがあるが、劇伴が当時流行ってたっぽいドラムンベースチックなものなのが90年代らしい。
主人公をいじめ抜くアロノフスキー節は既に完成していて、訳の分からん数字のことを延々と考え続けて勝手に気が狂っていくマックスを見ていると、こっちもおかしくなりそうなヒリヒリした焦燥感が伝わってくる。黒がやたらと濃いザラザラの画面もジャンクフィルムっぽいアングラ感があり、雰囲気は十分。

第一作目にして既にセンスが垣間見えるのは凄いが、個人的にはそこまで刺さらず。主人公がひたすら内向的に悩みまくる話にそこまで魅力を感じなくて、それこそ監督が後に撮る『ブラックスワン』とか先に挙げた『鉄男』くらい現実への侵食を描いてくれていたら面白いんだけど、そこまで映像的な遊びは見られず(予算的にしょうがないんだろうけど)。ストーリー的にも小難しいことをつらつらと喋りまくっている形で、大層な事やってるようで実はなんでもない話なので、最初から最後まで拡がりがあんまりない。その堂々巡り感がこの映画のキモなのかもだが。

(2022.198)
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