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トラック野郎 御意見無用のあのレビュー・感想・評価

トラック野郎 御意見無用(1975年製作の映画)
3.9
深作欣二×2くらいの激しいカメラワークが印象的でした。三半規管が弱い人は地獄でしょうね。

というわけで、全編を通して若干コメディ要素の古さは感じましたが、ドライブインでの殴り合いや対向車をものともしないトラック同士の対決は今にも通用するスリリングさがありました。

特にラストの、山がちな日本の国土で一体どこにあるのかさっぱり分からないような、延々と続く謎の平原を直走る一番星のシーンでは、演出で盛り上げるためにはリアルさも排除してしまう潔さが光っていました。高速道路では絶対に得られない面白さを堪能させていただきました。

また、やもめのジョナサンたち絶倫夫婦とその家族の掛け合いや、トラックの無線を上手く使った愛の告白といった面白要素が隅々まで張り巡らされていたため、とっ散らかったストーリーを気にせず最後まで鑑賞できました。

ラブストーリーについては正直全然面白くなかったのですが、高度経済成長も終わりがけで、小津映画の時代よりもかなり今と変わらなくなってきた風景の中で、トラックというリスキーな消耗品を一人で背負い込むトラック野郎たちの悲哀に満ちたエピソードには、本当に今にも通じる運転手の過重労働問題を感じさせ、なんとも言えない気持ちになりました。来年から荷物が届かなくなるかもと言われていますが、これを見たら何も言えなくなります。酒や色恋沙汰で無理矢理ハイになって、日々の苦しみを紛らわす様が痛々しかったです。
あ