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レインメーカーのYYamadaのレビュー・感想・評価

レインメーカー(1997年製作の映画)
3.8
【法廷映画のススメ】
グリシャム原作⑥
『レインメーカー』(1997)
〈フィクション (現代 / メンフィス) 〉

◆法廷の争点
医療保険の支払い拒否の正当性
・支払い拒否は、規約に基づくものか?
・尋問前に退職した保険会社の担当者を証人喚問出来るか?

〈見処〉
①ベストセラー作家グリシャム原作の
 大ヒット「リーガル・サスペンス」
・『レインメーカー』は、1997年に製作された法廷サスペンス。
・本作の舞台はテネシー州メンフィス。悪徳弁護士ブルーザー(ミッキー・ローク)に雇われた、弁護士志望の青年ルーディー(マット・デイモン)は、ブルーザーの相棒デック(ダニー・デヴィート)から、弁護士の悪辣な手法などの教えを請う。
・そんな彼の元に、白血病の息子を抱えた母親から、医療保険の支払いを拒否している、大手保険会社グレート・ベネフィット社を訴えたいという相談を受ける。
・司法試験に合格したルーディーは、デックと弁護士事務所を開き裁判に臨む。会社側の凄腕弁護士ドラモンド(ジョン・ヴォイト)のさまざまに画策により、新人弁護士のルーディーは苦戦するが、人権派判事のキプラー(ダニー・グローヴァー)により、裁判にこぎつける。
・ルーディーは、圧倒的な不利な裁判に対して果たして雨が降るように大金を稼ぐ「レインメーカー」弁護士になれるのか?
・本作は、ジョン・グリシャムが1995年に
上梓した、第六回小説『原告側弁護人』を映画化。監督は『ゴッドファーザー』の名匠フランシス・フォード・コッポラ。処女作から全て映画化されてきたグリシャム作品であるが、前作『チェンバー/凍った絆』(1996)から、興業上は苦戦。本作においても、良作の仕上がりを見せているが、40百万ドルの製作費に対して、興行収入46百万ドルと辛うじて黒字となっている。

②マット・デイモンの原点
・ハーバード大学在学中から、端役による
俳優業をスタートさせたマット・デイモン。ジュリア・ロバーツ主演の『ミスティック・ピザ』(1988)の端役デビューから、1996年の『戦火の勇気』まで、長い低迷時代を過ごしていたが、その期間に、幼馴染のベン・アフレックと共同脚本した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の映画化の映画化が決まり、公開前から注目を浴びるようになる。
・本作は『グッド・ウィル・ハンティング』とほぼ同時期に撮影され、公開時期(1997年末)も同じ。本作でデイモンが演じた弁護士志望の青年ルーディーと同様に無名の俳優であったが、本作公開後に『グッド・ウィル~』にてベン・アフレックと共にアカデミー脚本賞を受賞、主演男優賞にもノミネートされるなど、まさに「ハリウッド」のレインメーカーとなった。

③結び…本作の見処は?
オカダ・カズチカより前に「レインメーカー」はいた

◎: キャラクター形成、法廷の駆け引き、コメディ要素、クレア・デインズとの恋愛感情なと、グリシャム作品の中では映画としての完成度は突出している。監督・脚本を務めたフランシス・フォード・コッポラの力量の賜物。とくに法廷論争の描写に乏しいグリシャム作品であるが、本作による弁護士同士の駆け引きは、興味深い。
◎: ショッピングモールの片隅に事務所を構える悪徳弁護士ミッキー・ロークと、その助手ダニー・デビートの小賢しい調査手法は、人気TVドラマ「ベターコールソウル」を彷彿とさせる。
○: 国民医療制度の乏しいアメリカにおいて治癒出来る病においても、低所得者は救われないことを問題提起している。
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