Fitzcarraldo

ガンジーのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

ガンジー(1982年製作の映画)
3.0
第55回アカデミー賞(1983)
・作品賞
・脚本賞[John Briley]
・監督賞[Richard Attenborough]
・主演男優賞[Sir Ben Kingsley]
・美術賞[Stuart Craig/Robert W. Laing]
・撮影賞[Billy Williams/Ronnie Taylor]
・衣装デザイン賞[John Mollo/Bhanu Athaiya]
・編集賞[John Bloom]
八冠を獲得したMohandas Karamchand Gandhiの伝記映画。

いきなりガンジーの暗殺シーンから始まるのだが…何も思い入れのない状態からいきなり死ぬシーンを見せられても何のこっちゃ分からない。

ほぼほぼ縁遠い親戚の葬式に参列したようなもので…何も感じないと言ってしまえば冷酷だが…実際はそんなもの。

誰だか分からないハゲたオッサンが(ガンジーのこと)いきなり射殺されようが何も感じない。

このオープニングは違う気がする。
ここで一度見せてしまってるので、ラストでもう一度この暗殺シーンをやるのだが、当然だが既視感しかない。

3時間の長い間、ガンジーの辿ってきた道をダラダラと見てきたので、冒頭よりは感じるものはあるのだが…とにかくここまでの道のりがフルマラソンかのように長くて長くて、いつ途中でリタイヤしようかと、そればかりが頭の中でこだましていた。


冒頭で暗殺され、髪がフッサフサの青年期に時代は遡るのだが…

若かりしガンジーは弁護士だったことに驚く。仏教のお坊さんだと思っていた。弁護士だったこと教えてくれた歴史の先生いたかな?


とにかく本編は、やにむに長くて退屈極まりないのだが、ところどころガンジーのセリフでハッとするようなことを言うので採録する。


ガンジー
「正義のための闘いには、あなた(白人の牧師)のような味方が現れるものだ。危険を覚悟でね」


白人と並んで歩くのも憚れる差別が横行していた南アフリカ。

ガンジー
「"右の頬を打たれたら左の頬を出せ"では?」

白人の牧師
「それは例えだよ。主は…」

ガンジー
「自信はないが、勇気を持てという意味だと思う。何度打たれても、打ち返さず、逃げもしない。その姿を見れば人の心は動く。憎しみが消え、尊敬が増す。キリストはそれを悟ったのだ」




ニューヨークタイムズの記者に対して

ガンジー
「新聞や雑誌がなければ世論はまとまらない。あなたの仕事は重要だ」

世論をまとめるのは重要だけど、政権に寄り過ぎたり、偏向報道することでまとめようとすることは勘弁してほしい。

常に独立した報道機関であることを望む。

毎年「国境なき記者団(Reporters Without Borders)」によって調査・発表される報道の自由度ランキング。

日本は世界で71位…

日韓関係をすぐ持ち出して対立を煽る輩が多いが、韓国は43位。同盟国アメリカは42位。

これFIFAランキングだったらどうなの?
FIFAランク71位だったら?絶対に監督解任だぁ選手選考がどうだぁとかフォーメーションがぁとか言いたい放題言うでしょ?FIFAランク23位の今でも言うてるくらいなのに…。

世界で報道の自由度が低いと、世界から認知されてるのに、なんでもっと声を上げないの?情けない。これも代々、政治に興味を持たせない方がいいと判断した教育なり、親の躾なりだとは思うけど。しかし、見ないふりをし続けたらどうなるかくらいは大人になったら考えるべき。

戦争だけはしてはならない。

国防のためには戦争も辞さないというこのいまの空気感は、先の大戦時の高揚した空気感と非常に似ている気がしてならない。

敵国を名指しして、対立を煽る。このやり方も同じではないか…

三世代も過ぎれば、戦争の悲惨さは薄れてまた同じことを繰り返すとはよくいったもので、人間とはいかに狂気を孕んでいるかということを自覚し続け、監視することが大切である。それは各自がやらなければならない。


話が大きくなってしまった。

映画に戻る。



ニューヨークタイムズの記者ウォーカーを演じるのはMartin Sheen。
意外なところで大物キャスティングしてることに驚く。

ウォーカー
「自ら食事の支度やトイレ掃除をなさるとか?」

ガンジー
「働くことで学ぶのです。どの仕事も大切だと。実際、トイレ掃除は法律より大切ですよ」

これこれこれ!このことを根底にして生きてる人があまりにも少ないような気がする。
煌びやかなものばかりが正しくて、臭いものに蓋をして見ないフリをする。
拝金主義マンが横行して上から目線で横柄な態度をとる。自分が法律とばかりの。すべて金で解決していく。
札束で頬を叩かれるようなものだ。
これでは右の頬を打たれても左の頬を出すには至らない。
必ず暴力で対抗するしかなくなるだろう。弱者が社会の弊害を真っ先に受けるから。

どんな仕事も大切なんだと知ること。特に中途半端な小金持ち、成り上がりマンが、勘違いして稼いでいない者に対して侮蔑的だと感じる。


誰かが掃除をしてくれているんだという意識が全くないから、平気でポイ捨てをする。公共のトイレもそう。和式でウンコはみ出し率がめちゃくちゃ高いけど、なんでウンコはみ出すの?それをなんでそのままにして出てきちゃうの?自分のウンコで、自分が失敗したんなら、自分のケツは自分で拭きましょうよ。それを掃除してくれる人がいるんだよ!なんで他人のはみ出したウンコを掃除しなきゃならないのよ!そういう想像力の欠如が一番怖い。


話を戻す。


ガンジー演説
「スマッツ将軍の新しい法律によると、インド人は全員、犯罪者の如く指紋を取られ、結婚もキリスト教式しか認められない。これでは我々の妻や母親は売春婦。我々は私生児になります。そして警官は、インド人の住処を訪ね、そこに住む女性全員の身元を調べる。いいですか?警官は断りもなく家に入れるのです。
(中略)
どんな目にあっても、相手を攻撃せず、殺しもせず、ただ断じて指紋は取らせない。投獄され、罰金を科され、財産を奪われてまも、屈服しなければ自尊心は失いません。こぶしを振り上げるのではなく、受けてください。我々の苦しみを見て、彼らは不正に気付きます。殴られれば、もちろん痛いでしょう。だが、負けてはなりません。彼らはわたしを痛めつけ、骨を折り、殺すかもしれない。だが、私の死体は手にしても、服従は得られない」


これで妻や母親が売春婦、われわれは私生児というセリフは…ちょっと何言ってんのか分からない。


とにかく現在の状況説明ばかりで、人物の行動があまりない。

大衆に集まる人。
そこで演説。
警察もしくは軍隊による妨害。
逮捕。
釈放。

これの繰り返しばかり。
ずっと同じシーンを見せられて催眠療法のように眠くなるばかり。

一向に先に進んでる感がない。


民衆の配置と数…
ものすごいエキストラ。
この方たちは恐らく無償だろう。

崖の上にまでいる。これこそインドっぽい。




暴動で警察官を殺した事件を受けて

ガンジー
「殺人と流血で得る自由など要らん。今のインドには恥しか感じない。

おぉカッコイイ。


断食を始めるガンジー

ガンジー
「私は…絶望に陥った時、人類の歴史を思う。勝つのは、いつも真実と愛だ。暴君や殺戮者は、一時は無敵に見えても結局、滅びてしまう。そのことを忘れてはならん。それが本当に神の道か、正しい道かと迷った時、歴史を思い出し神の道を見出すのだ」

おぉカッコイイ。

無敵に思えた安倍政権もようやく滅びた。
習近平やプーチンの暴君は居座り続け、もはや無敵にさえ見えてしまうが…早く滅びてくれることを願う。



海まで行進して塩を作るという運動

ガンジー
「抵抗運動とは、反応を引き起こすことだ。法律が変わるまで刺激を与え続ける。主導権はこちらにある。それが抵抗運動の強みだ」

やべぇカッコイイ。



後半から急に当時のニュース映像風な画面が差し込まれる。俄然お勉強してる感が出てくる。このバランスもあまり良くないなぁ。


ガンジー
「人間の幸せはモノではない。いくら便利でもね。幸せは、労働と働く誇りにある。インドは村の国だ。手工業の復活で村から貧困をなくしたい。貧困は最大の暴力だよ。建設的な計画を立て非暴力に解決する。西洋の不幸を取り込むのは、インドの発展ではない」


[貧困は最大の暴力]

いまの日本にも同じことが言えるだろう。
この問題をいかに解決するか…



ガンジー妻
「ヒンドゥーの教えでは、神への道とは、所有欲と情欲から解放されること」

オォォォこの2つは現代人の二大欲求といえるのではないか?ここから解放されることが可能なのか?

ある県で大きなお寺の住職をしている人を知っているのだが…その人は仕事関連のことで月一回、上京していたのだが、その時にこっそりと風俗の予約の電話を入れていたことに衝撃を受けたのを覚えている。

その人は独身だし、別に構わないのだが…
何が気持ち悪いかって、表向きは東京に修行で来ててとか大層なこと言ってる癖に、裏で風俗予約してるという…。情欲から解放されないアナタは神の道は…あっ、坊主だから神の道に従わなくていいのか…いや、しかしアンタの煩悩の多さよ。

話を戻す。

結局…宗教の違いで争うという、なんなのそれは。なんだったのよ⁉︎これまでのガンジーの頑張りは…。

インド独立のために非暴力の運動をして闘ってきたのに…最後にはヒンドゥー教とイスラム教で…インドとパキスタンに分断。そして殺し合い。

[今のインドには恥しか感じない]と言ったガンジーの意見を何も活かしてない。

そして民族大移動。
イスラム教はパキスタンへ。
内戦状態に。

ネルー
「コルカタは内戦状態だ。イスラム教徒が血の粛清を行い、ヒンドゥー教徒が報復を。次はパキスタンに残ったヒンドゥー教徒が危ない」



ガンジー
「あちらのイスラム教徒にも分からせたいのだ。この世の悪魔は、人の心にこそ存在する。戦いは心の中でするべきだと」

オォォォカッコイイ!
まさにこれをみんな自覚して、各々で戦っていくことが必要なのでは?SNSの中で互いに叩き合っても仕方がない。


名言モンスターのガンジーであったのが、唯一の救いではあったが、とにかく長くて退屈なのは間違いない。


いまの若い子たちは倍速視聴で終わらせてしまうのだろうが、これはそれでも問題ないと思う。
Fitzcarraldo

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