むぅ

ガンジーのむぅのレビュー・感想・評価

ガンジー(1982年製作の映画)
4.1
「......寝坊ですか?」

メガネ、大好きなのだ。
私のルッキズムはメガネに敏感なようで、メガネをかけているだけで割増される。
ところが残念なことに好きと似合うは全くの別物。
あら素敵と衝動買いしたメガネ、どうやらそこだけ3Dのように浮いて見えるらしい。

「視力2.0だけど」
「原始人!...花粉症ですか?」
「全く」
「原始人!....えーっと、ダテですね?」
「ねぇもうお願いだから似合わないって言ってくれた方が楽になるんだけど」
「それ、いらなくなったら下さい」
その場で贈呈するのは癪に障るので、1年後異動する際にくれてやった。
あれから7年、視力は1.5。
あれ以来、Zoffには行ってない。
あの時の自分でもわかる。
ガンジーのメガネは私が最も似合わないタイプのメガネ。
「非暴力 不服従」よりも先に「丸メガネかわいい」と思いながら観た私は不届千万。


インド独立の父 ガンジー
その生涯を描く伝記映画


「『RRR』ガンジーが観たら卒倒すると思う」という発言に思わず笑った。
観なくてはと思いつつ後回しにしていたのだが、『RRR』の前に観ておくかとなる。
あぁ、勉強不足。
「非暴力 不服従」という言葉くらいで、ガンジーの知識が私には全くなかったと気付かされる。
弁護士だったのか!そんなに長く南アフリカにいたのか!など、初めて知る事が多かった。そして意外なのが演説は得意ではなかった点。同時代を生き、ガンジーが2度も手紙で戦争をやめるよう訴えたヒトラーを思い出す。私はガンジーよりヒトラーについて持っている情報が多い。
彼を描いた作品や演説で感じる"怒り"、まだこの一作だけだけれどガンジーには一切ないことがわかる。
そしてその2通の手紙はヒトラーの目に触れる事はなかったという。
例えヒトラーが読んだとしても彼の行動は変わらなかったと思う、私は。
そこで怖くなる。
「完全なる愛とは、愛以外に何も持たないこと」というガンジーより、「敵の悪を拡大して伝え大衆を怒らせろ」としたヒトラーの"怒り"の方が"仕組み"がわかるという事なのだろうか。
自分の中の"怒り"を見つめる作業をしなくてはいけないかもしれない、そう思えた事は今作からのギフト。

凄いと思うのは、その「非暴力 不服従」を自分だけが実行したのではなく、波及させていったことだった。
そのために断食を繰り返す。
宗教、人種関係なく"人"を大切にしているように見えるのだが、"人"と"命"がガンジーの中ではどういう繋がりを持つのか聞いてみたい気がした。
殺し合いで奪われる命と、目的を達成するために失われる命、私はそこに違いを見出せない。でもガンジーにとってはそこに色彩であったり明暗のような違いがあるように見えて、目が離せなかった。

鑑賞後、ガンジーについて調べていて印象的だった事がある。
それはガンジーと長男の関係。
どうやら上手くいっていなかったようで、この言葉が合ってるのかは不明だが長男は"グレてた"らしい。ガンジーでも家族との関係は難しかったのかなと思うと親近感が湧く気もするし、もしも家族を顧みず人類のために尽力していたゆえの事なら切ないなとも思う。ガンジーの死から半年後、長男は路上で遺体となって見つかる。
ガンジーが家族を"家族"としてではなく、"人類"として見た結果がこれなのだとしたらやり切れないなと思ってしまった。


さすがに原始人呼ばわりくらいでは1ミリも怒りの感情はわかないが、言葉も含め暴力や差別を目の当たりにしたら、更にそれが自分の大切な人たちに向けられたら、私の中に怒りや恐怖は間違いなく生まれる。
でもそれを同じ事で返したくはないと思う。
今作を観てそう思ったこと、忘れずにいたい。3回メガネが変わったなどという、くだらない事は早々に忘れて。


鑑賞後、Filmarksの成分ワードなるものを見てみた。
もちろん[メガネ]はなかった。
『RRR』に[ガンジー]もなかった。
むぅ

むぅ