阪本嘉一好子

おくりびとの阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

おくりびと(2008年製作の映画)
4.8
この映画の内容は説明する必要がないと思うが、個人的に、私の授業でこの映画をどう使おうか考えている。まだ、何にも煮詰まっていないが、主人公、ダイゴの心の変化、例えば、納棺師として歩んでいくかへの疑問、解決、父の死により父への蟠りが解けていくなどダイゴの心の移り変わりに焦点を置くのもいい。彼が納棺師として、歩もうか迷っているとき、この仕事が父親との再会を果たしてくれて、心からこの仕事に対しての確信と自信が持てたこと。でも、これを彼は知らなかった。父親の顔を思い出せなく、思い出したくもない彼にやっと、人生の一コマの区切りがつけたこと。彼の生まれてくる子供とともに歩む新しい人生に明るい希望が持てたこと。そして、父を許せたことが、最も彼の心の重荷を下ろして気持ちが軽くなったと思う。

この主演の男優は顔の表情をよく使い分けていて、微妙な顔の演技が上手だった。しかし、それに反して、伴侶役を演じた俳優はミスキャストだったと思う。この人は誰か知らないがアニメの声優かもしれない声質で、間延びした話し方で、緩慢で、申し訳ないが、残念だった。ただ、この人の役柄は重要で、ダイゴに語りかける一言一言が意味を持っていて、ダイゴの気持ちや考えに徐々に気づきを与える。そして、ダイゴは変わっていった。例えば、伏線となっている父から教わった『いしぶみ』を伴侶に渡す場面や父親の好きなレコードを大切に保存していることが母の愛情の表れと語る伴侶の場面。
しかし、納棺師としての職業選択の決定だけは彼女が彼の気持ちを変えられなかった。彼女が気づいた。これが、素晴らしいかった。

人生においても自分が気づき変われること、または、人の言葉で気づき変われること、全く信念があって、変われないことがある。こんな実例をあげて、話し合いのポイントが見出せればいい。

こういうことに個人的に感動しいたが、クラスの学習者にとってここが論点になるかどうかはわからない。主に、学習者が、会話のトピックを決めて話あう学習者主導型のクラスだから。

少なくても、納棺師という、山形県酒田での貴重な役割、それに、出羽三山として聳える山々、その残雪の鳥海山をバックにチェロの音など話題はあるだろう。

*授業は一月上旬で、学習者はこの映画を見てきて、この映画についてどんなことを話し合いたいか決め、感想、経験、意見などグループで言い合うクラスです。何かアドバイスがありましたら、歓迎します。