トムヤムくん

ラストキング・オブ・スコットランドのトムヤムくんのレビュー・感想・評価

4.0
再鑑賞。スコットランドからやってきた医者と、ウガンダの大統領であり独裁者のイディ・アミンの物語。タイトルに「スコットランド」って付いてるけど、めちゃくちゃ「ウガンダ」が舞台。

本作でイディ・アミンを演じたフォレスト・ウィテカーは、その年のアカデミー賞主演男優賞やゴールデングローブ賞主演男優賞などの映画賞を総ナメしたことで知られる。

物語はあくまで架空の医者の視点で語られるので、どこまで真実かは分からないけれど、話が進むにつれて緊張感が増していくサスペンスフルな展開は映画的で素晴らしい。まぁ原作『スコットランドの黒い王様』がよく出来ているというのもあるけれど、映画でも見事な政治×脱出劇になっているし、人種問題にも絡めていたりして、ただイディ・アミンを描いただけでは終わらないのが巧み。

そもそもなんかサラッとやってるから伝わりづらいけど、一人のカリスマが独裁者へと変貌していく恐怖を第三者の視点で客観的に描くのって結構すごい。例えばヒトラーの伝記映画を作るとして、ヒトラーじゃない人間を主役にするのにはかなり勇気がいる。それに1981年に『食人大統領アミン』という伝記映画が作られてるけど、こちらはがっつりアミンが主役を張っている。

最近だと『デューン 砂の惑星 PART2』が、割とこれに近いことをやっていたけど、冷めた目で傍観するゼンデイヤはあくまで物語の外にいる存在でしかなくて、メインはやっぱりリサーン・アルガイブとして崇められるティモシー・シャラメの方だったし。

そう考えると、フォレスト・ウィテカーは本作では助演になってもいい立ち位置(全体の34.63%しか出ていない)なのに、様々な主演男優賞を総ナメにしているんだから、やはり彼の醸し出す異質さや存在感は圧倒的で、彼の怪演にはどう足掻いても飲み込まれるしかないんだろうなと。

しかし、何より怖いのは映画で描かれている部分はまだまだ序の口で、実際のアミンは30万人以上のウガンダ人を虐殺していたというところ。本編よりもエピローグで描かれる部分でフォレスト・ウィテカーに対する恐怖がさらに増していくのも上手い。まじでエンディングがいちばん怖い。