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イエスタデイ、ワンスモアのnetfilmsのレビュー・感想・評価

イエスタデイ、ワンスモア(2004年製作の映画)
3.8
 誰もが羨む優雅な暮らしを送るトウ夫妻(アンディ・ラウ、サミー・チェン)。しかしその実態は高級品専門の泥棒夫婦だった。ところがある日、トウ夫人は夫から理由も告げられぬまま、離婚を宣告されてしまう。それから2年が過ぎ、彼女は資産家の一人息子スティーブ(カール・ン)からプロポーズを受ける。彼の母親(ジェニー・フー)が所有する宝石目当てで結婚を承諾した彼女だったが、プレゼントされる直前に問題の宝石が盗難に遭ってしまう。元夫の仕業と確信した彼女は、宝石を追って彼のもとへと向かう。かつては愛し合う夫婦だった2人が、夫に突然別れを告げられる。彼は盗みの取り分が平等でないことを理由に別れを切り出したが、その別れの理由は釈然としない。プライドが高く、ワガママの限りを尽くしてきた妻だったが、内心自分の何がいけなかったのか思い悩んでいる。夫はそんな妻の考えよりも、常に一歩先を行く天才肌だった。何かゲームをすれば必ず夫が勝ち、妻は頭の良さでは夫にまったく歯が立たない。元夫婦であることを除けば、まるでルパンと峰不二子のような騙し合いを繰り返す2人が、資産家の息子スティーブとの縁談により、まさかの再会を果たす。

 夫婦は2人とも盗みのプロフェッショナルで、狙った獲物は確実に奪い取る凄腕だが、妻は元夫の口からスティーブとの再婚を破談にして欲しいという言葉を心待ちにしている。そんな女の心境をアンディ・ラウは知ってか知らずか、あくまでプロフェッショナルな盗みに勤しみ、元夫婦の関係を仕事には一切持ち込まない。元夫から愛の言葉を聞き出したい妻と、あくまで別個な2人として協力して盗みを行いたい元夫との摩擦が今作の旨味となる。中盤、元夫を自分の部屋に呼んだ時の妻のイミテーションが胸に迫る。妻は元夫に、男の存在をチラつかせて嫉妬させたいのであるが、元夫はそんな考えはお見通しであり、逆に自分も妻に仕返しをしようとするが、その様子を遠くから見つめる妻の姿が切ない。お互い素直になれないまま、盗みの仕事は次々に成功するのだが、元夫の冷ややかな愛に納得出来ない妻は、余命三ヶ月の重病人を装う。クライマックスの種明かしには思わず胸が熱くなった。そこまでの思いで最愛の元妻をゲームに巻き込みながら、一滴の涙さえ見せないアンディ・ラウの男らしさにはぐっと来てしまった。『Needing You』の頃の初々しさに比べれば、サミー・チェンの風格のある演技に違和感を覚えるのも事実だが、アンディ・ラウとサミー・チェンの名コンビは今作で一旦はフィナーレを迎えることになる。
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