やわらか

タレンタイム〜優しい歌のやわらかのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
4.3
多民族国家マレーシアを舞台にした青春群像劇。複数の言語や宗教がモザイクのように組み合わさってできたマレーシア社会で、その摩擦により生まれた隣人との高い壁を音楽で包み込み溶かしていくようなお話。
 
実際この辺りの国は、どこも国内に複数の民族が入り混じって暮らしていて、民族同士の衝突、宗教的な対立、それぞれのルーツとなる国との関係など、いろいろな問題を抱えている。この映画で描かれているものは、まだまだ生易しい部分であろうけど、それでも個人の生活にその軋轢が暗い影を投げる様をしっかり描いている。あと、映画の冒頭でも注記が出るけど、英語とマレーシア語、中国語がポンポン切り替わる会話は言語的にもすごく興味深い。
 
たぶん十代半ばの主役級数人は本職の役者じゃないと思うけど、それでもきっちりと演じるべき役をこなしてた。脇役の中ではファンキーかつ温かいヒロインの家族が印象的。特にお父さんのシニカルでかつ優しいキャラクターが好きだな。

作品のテーマのひとつである歌は、聴いていてオリジナルじゃない誰かの有名な曲かと思ってしまった。音楽を担当したピート・テオさんはヨーロッパでも活動した本格的なミュージシャンなんだね。フォークなところと、西洋音楽の要素、それにアジアンテイストなものが混ざった、懐の深い作品だったなー。最後の"I go"の二胡の演奏も曲も素敵だった。
 
正直に言えば、上映プログラムをチェックした時は、来月旅行に行くこともあって同時上映の「台北ストーリー」の方が観たかった。ただ、時間的にラストしか観れなくて、仕方なくこの「タレンタイム」を選択することになった。けど、結果的には大正解だったな。思いがけずとても良い映画を観れた幸せを感じる。
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