ヘソの曲り角

マイ・ブルーベリー・ナイツのヘソの曲り角のレビュー・感想・評価

2.5
これ以前のウォン・カーウァイ作品は良くも悪くもまだるっこしさがあったからまだ面白がれたのだと本作でわかった。簡潔になった脚本とカラッとしたアメリカの風景によって今までそれで誤魔化してきた耽美な映像感覚は消え失せ、起伏のない陳腐でありふれた恋愛ドラマになっている。これならわざわざ香港からアメリカに行って撮る必要なんて無かったじゃないか。

目の前にいい男が現れたが元カレが忘れられないので旅して忘れてこようという話。私の言えたことではないが、実に悠長な話ではないか。それでまあ旅先で色んな経験をする、という展開なんだけど「色んな」がたったの2つしかないのが問題。この形式を取るなら挿話は最低でも3つ欲しいと思う。ひとつひとつの尺短くするか全体伸ばすかした方がよかったのでは。全部がチンタラしてるのに主役のノラ・ジョーンズが健康的な印象なので全然合わない。それでいて一番ひどいのは、ひとつ目のアル中束縛夫の話が最初から最後まで最低過ぎてうんざりするところだと思う。後半ナタリー・ポートマン出てきてからは普通のアメリカ映画っぽくて面白かった。ポーカーのくだりなんか普通によかったと思う。

今まで気づかなかったんだけどウォン・カーウァイって一対一しか撮れないのではないかと思った。本作はほぼ必ず二人だけの場面しかなくて小規模の演劇っぽいなと思ってたのだがよく考えたらキャリアの最初っからずっとそうだった。むしろ香港での彼の作品で演劇っぽさをひとつもおぼえたことがないのはすごいのでは…?。