半兵衛

忍法忠臣蔵の半兵衛のレビュー・感想・評価

忍法忠臣蔵(1965年製作の映画)
2.5
山田風太郎原作作品としてもアンチ忠臣蔵時代劇としても、そして肝心のエロ時代劇としても掘り下げが足りずドラマの構成も破綻しているため中途半端な出来映えに。そもそも豪放磊落が持ち味で繊細な心理演技を苦手とする丹波哲郎に女性に裏切られ世捨て人になった複雑な主人公のキャラクターがまったく合っていないのが致命的。

主君の恨みを晴らすため吉良を倒さんとする大石たち赤穂浪士の目的を阻止するため雇われた忍者・丹波とその部下の女忍者たちのドラマは見た目は面白そうだけれど、そのやりとりを重苦しい白黒の映像と怪談映画かと思うくらいおどろおどろしい音楽、浪士と忍者のやりとりを長ったらしくやっているのでいつしか飽きてくる。そして肝心の主人公が目的を放棄していつもの定番の『忠臣蔵』になってしまうのにびっくり。

でも単なるお姫様ではない、熱い女性としての恋情を胸に秘める加藤泰作品のヒロインらしい桜町弘子の女性像や、碇ゲンドウみたいに感情を一切顔に出さず淡々と討ち入りにのぞむ不気味な大木実の大石内蔵助は好みだけれどね。あと義に殉じる義士と愛を選んだ主人公たちを対比させたラストも。

そのいかつい見た目から『仮面ライダー』をはじめ特撮番組で怪人の人間態を多く演じた佐藤京一や、60年代から70年代にかけて東映作品でよく見かける五十嵐義弘が結構な頻度で出てくるのも見所、一方不破数衛門を演じる田中邦衛はほんのちょっとしか出てこない。

ちなみにポルノ×忍者×丹波哲郎という組み合わせはこの作品が製作された8年後に作られた『ポルノ時代劇 忘八武士道』で花開くことになる。

あと男女入れ替わりネタは映画ではこの作品が最初かな、山田風太郎以前にそんな珍妙なネタを取り扱った作品は無かったはずだし。
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