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剣鬼のtakatoのレビュー・感想・評価

剣鬼(1965年製作の映画)
4.1
 生まれながらに居場所のない男の悲しきも美しい物語。町山さんと春日さんの対談を聞いて、是非見たいと思っていた一本。

 冒頭から「野良犬」のごとくワンちゃんのドアップ。そこから畳のドアップからカメラは髪を伝っていって亡くなったお母さんを写し、主人公雷蔵の出生の物語をサクサクっと語っていく。とにかく80分ほどの短い作品だから緩い場面や、無駄な場面が殆どなくて実に締まった構成になっている。

 生まれながらの差別に苦しみながらも、花を見事に育てる純粋さを持っている雷蔵は、自らの居場所を得んと人斬りの道へと進んでいってしまう。しかし、あがけばあがくほどに世間は、運命は彼を追い詰めていく。剣の師を自ら手にかけてしまい、暗殺を繰り返してでも擁立していた殿様はアッサリ死んでしまう。

 真面目に純粋に必死に生きようとしているのに受け入れられない、居場所のない男。そんな男が持つことができた唯一の心通えた愛する人の名は「咲」。そんな男の最期の場所は、二人の想いの結実たる花咲き乱れる花畑。

 ところで、町山さんと春日さんの対談で話しているラストの、雷蔵が花畑に消えていくというシーンがなかったような…。
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