Omizu

偉大なるアンバーソン家の人々のOmizuのレビュー・感想・評価

3.7
【第15回アカデミー賞 作品賞他全4部門ノミネート】
『市民ケーン』オーソン・ウェルズ監督作品。ではあるが、オリジナルの131分から大幅にカットされており、カットされたフィルムは廃棄されたためもう二度とオリジナル版は観られないという悲劇の作品。ちなみに再編集を行ったのは、助監督をつとめたかのロバート・ワイズ。アカデミー賞では作品賞、助演女優賞(アグネス・ムーアヘッド)、撮影賞、美術賞にノミネートされた。

これもまたオーソン・ウェルズの腕が光る秀作。再編集版ではハッピーエンドがやや強引に挿入されているが、ウェルズのオリジナル版ではもっと救いのない話だったようだ。

まぁこれはこれで。流石ウェルズが監督しただけあって映像へのこだわりがすごい。特に影の使い方。陰影表現が素晴らしい。屋敷の美術とその映し方も。一級の芸術作品であった。

甘やかされて育った名家のボンボンが報いを受ける話。このジョージがとにかく最低。平気で人を見下す、労働はしない、人の恋路の邪魔をする…とにかくやりたい放題。

彼が最後には報いを受ける…のだが、ウェルズの手にかかっては「そこまでしなくても」というくらい救いのない終盤へ向かっていく。本当にオリジナル版をみたい。ウェルズはどういう終わり方をしていたのだろうか。

とにかくアカデミー賞ノミネートもされた撮影と美術が素晴らしい映画。助演女優賞は…なんでこの人だけなんだろう…オリジナル版が観られないのは残念ではあるが、数少ないオーソン・ウェルズの秀作として十分観る価値がある作品。
Omizu

Omizu