ひでG

風の中の子供のひでGのレビュー・感想・評価

風の中の子供(1937年製作の映画)
4.1
隠れた名作です!
父の録画コレクションからチョイス。

1937年、すでに国威発揚映画が増えてきた中で、子ども視点で、子どもは親の所有物や添え物ではなく、小さくても一つの人格があり、その世界があるって、当たり前の人間讃歌になっていることがとにかく素晴らしい。

監督の清水宏さんは、小津安二郎さんと同期で親友。
子どもの目線のローアングルは小津さんと似ている。だが、一程度の良作は作っていたが、当時の評価はあまり高くなかったらしい。

僕も全く知らなかったけど、いやあ〜素晴らしい!(清水宏作品を見直そうと再評価の機運も高まってきているとのことです。)

お話は至ってシンプルで1時間ちょっとの中編。
善太と三平の兄弟の日常を丁寧に描いている。
当時、ターザンの雄叫びが流行っていたのかな、「あああー」で近所の子供たちが集まってきたり、
兄弟で「バカ、バカ、バカ!」と言い合ったり、
布団の上で水泳の真似をしたり、
木の上から家の方を眺めたりと、子供世界が本当に生き生き再現されている。

お父さんのタバコの灰を灰皿に受けてあげたり、一緒に相撲取ったり、連れていかれたお父さんの方を見に行き、じっと佇んだりと、小さな何気ないシーンのひとつひとつが素晴らしい!

最初に書いたことだが、当時は、子供独自の世界があることがあまり認められていなかった(これ以降さらに)中で、子供たちにも、大人と違った独立の世界や見方があるんだってことを示してくれている。

家族と別れ、寂しくて木に登ったり、風呂桶で川を下ったり、三平の寂しさがそんな行動に見事に語られている。

父との再会で、兄弟が交互に顔を覗いては走り回るシーンも素晴らしい!(今の映画でも、大人側からだけ作られた映画なら、
兄弟で抱き合って、感動的なテーマでドーン!なんて場面にさせがちなのに、、)

また、どこがて清水宏作品を観てみたいと思っています。

隠れた逸品を録画してくれていて、お父さんありがとうございました!
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