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きらきらひかるのdoiのレビュー・感想・評価

きらきらひかる(1992年製作の映画)
4.0
どれだけ酔っ払って帰っても冷淡なほど当然のように世話を焼いてくれるトヨエツ。その優しさには愛情が欠落している。おそらくは憐憫を言い換えたもの程度なら?それが悔しいと同時に依存している自分が受け入れられずに乱行を繰り返すひろ子。この夫婦の間にセックスがあれば力関係のバランスを元に戻したりもできるのかもしれないが、夫の心と体の拠り所は筒井道隆にある。アル中と同性愛者、はぐれ者同士の夫婦で釣り合いが取れているわけではない。トヨエツだけが性的にも「社会的な生活」にも満たされている。それが面白くなくて歯の浮くような表現だが「共同戦線」を張るひろ子と筒井道隆はままごとに興じるフリをして彼を苛立たせる。この映画に色気があるとすれば、観客の最大の関心事(ひろ子の性欲)のほのめかし方にある。このドラマを水面下で回すのはこれすべてひろ子の性欲。しかし泥酔したひろ子がトヨエツにはっきりと「抱いてよ」と突っかかる場面はある。こみあげては飲み下し、体内からやっと出てきたときにはこの言葉はすでに腐臭を放っている。それでも他の二人のように制限速度のない高速に乗っているわけではないので常に次は左に曲がるか右に曲がるか選択を強いられているのはトヨエツ、その葛藤に引き裂かれて出た「うちに帰ってそれぞれ生きたいように生きよう」。解決の糸口もない宙吊りの関係と自分が置かれた境遇そのものに酔いはじめる三人、最後は深夜の道路にひとり投げ出されてコンクリートに頬ずりするひろ子…で終わってほしかった。息子の気持ちを肩代わりするフリをして結局は突き放す父親は完璧に合う川津祐介、ampmのリンゴも川津祐介だと思えば。
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