湿疹

大理石の男の湿疹のレビュー・感想・評価

大理石の男(1977年製作の映画)
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50年代にレンガを三トン積み労働英雄として讃えられ、その後闇に葬られた男について、70年代の若い学生がドキュメンタリーを撮るために数人の撮影クルーをしたがえて真相を追う、社会主義ポーランド版『市民ケーン』のパロディとも言える作品。映像の次元を物語の次元、過去に撮られたドキュメンタリーという設定の映像の次元、過去の物語の次元の三層に分け、それらが相互に微妙にすれ違うようになる構成は『すべて売りもの』を思い出す。ワイダという作家のことがわかってきた気がする。
社会主義リアリズムはクソだと言い張ってることが申し訳なくなる。いやもちろん社会主義リアリズムはクソなんだが、クソのもとで作り上げられた虚像の陰に実在の人物はいて、人は彼の実在のうえに作り出した虚像をその時代ごとに改変し、姿を歪め(レンガを休まず積み続ける黄金の手がやがて焼かれて布で覆われるのが象徴的)、やがて博物館の闇に追いやったこと(『エルミタージュ幻想』を思い出す)、私たちもまたアイコニックなものとして彼を見ようとすると姿を見逃してしまうことを思い出す(彼は結局最後まで見つからないわけだが、社会主義リアリズムの時代においてもその後の変遷期でも誰も思いつかなかった「本人の許可を取る」という過程をただ一人だけ経ようとした現代の彼女が、かろうじて彼が死んだことだけは知ることができる)。素晴らしい構成だし十分見応えはあるけど、ヘンリー・フォンダ並みに脚が長い主人公の女優をずっと映える感じで撮ってるとこだけはいただけない(ワイダっぽいけどね)。女を偶像化することには抵抗ないんかい
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