かなみ

水の中のつぼみのかなみのレビュー・感想・評価

水の中のつぼみ(2007年製作の映画)
3.5
前向きとも後ろ向きとも言えない絶妙なスタンス 多分停滞でもない 前でも後ろでも、どこかへ向かいたいという意識。
思春期の葛藤のようなニュアンスが、完全に性的な倒錯や肉欲の浅はかさみたいな問題に移行することが少し勿体ない。ズッキーニ同様に異常な親に対する嫌悪を追い越して憎悪のようなものを感じる。メロドラマとまでは行かないが、陳腐で用意されたような結末への帰結は少し興ざめするところがあった。
アップになったとき、横顔のショットの多さが目を引き、そこには少女たちの不安定さや弱さが覗く。ラストの主人公のキスシーンの2人の横顔に集約している。結局だれも相容れず、結ばれず、救わない。
単に性愛の物語と片付けるには惜しいが、この問題以上のものは描かれずにいる。誰一人として成長しない、不毛で愚かな経験を積み重ねているだけ。
つぼみは水の中でなんて、息苦しさで咲けやしないだろうが、咲かないために、もしくは、枯れるために飛び込んでいるのかもしれない。世界はすべての花が咲き乱れるほど完璧に完全ではない。
かなみ

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