邦画ランキングで常に上位にいて、いつかは見ないとと思いつつなかなか見る機会がないまま四半世紀……ここまで来てしまった。
が、やっとその不朽の名作を鑑賞した。
結論から言えば、ある程度年齢を重ねたからわかることがたくさんあったので、今見てちょうど良かった。素晴らしい作品だった。
とにかくエモさ100%で心にしみる。
ずっと心がフワフワしてた。
描かれているのは戦後間も無くの、日本のどこにでもある家庭。
とにかく狭い住居、薄い布団、独特な夫婦間の空気、親子関係の機微、なんだかんだで善良な人々。
いまはだいぶ変化したが、昔の日本の家庭はどこもこんな感じだった……と、実際に当時を知らなくてもそう感じられるほど、全シーンすごく説得力がある。
細かい描写で言えば、どこでも構わずタバコ吸ってたし、親戚の電話番号は暗記できてたし、電車での移動にはめちゃくちゃ時間がかかっていた。
そんな風景はとても懐かしくて、登場人物も周囲にいそうな人たちで、お陰でどっぷりと感情移入してしまった。
当たり前のことしか起きないけど、それが大切なものだと思わせてくれる。
そう、これこそが日本人の生きる姿だったのだ。
また、場面を支えるやさしい音楽や環境音。
俳優は一人残らず全員うまい。
特に原節子の観音様のような美しさと、まだそんなに歳ではなかった笠智衆の穏やかな老け役の達者さが印象的だった。
そして全体的に見ても無駄なカットやセリフがひとつもない。
当たり前のことしか起こらないし言わないのに、そこに全て製作者が込めた意味を感じることがでこるのだ。これって相当凄いことだと思う。パーフェクト。