キウイばたけ

ディア・ハンターのキウイばたけのネタバレレビュー・内容・結末

ディア・ハンター(1978年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

『The Deer Hunter』はベトナム戦争を題材とした映画ですが、見終えた感想としては、果たして監督マイケル・チミノはベトナム戦争をメインに描きたかったのだろうか、というものでした。この映画でのベトナム戦争は題材のひとつでしかなく、監督が描きたかったものは「人間としての兵士の姿」ではないか、と。
そう思ったのは、主人公マイケル達の日常を語るシーンが本当に長いから。物語が始まるとしばらくの間、スティーブンとアンジェラの結婚式準備から当日の幸せそうな時間が映し出され、その間彼らは「いつもの調子」を感じさせる冗談を言い合い、笑い合い、時に険悪な雰囲気になったりと、私たち第三者もその場に居るような錯覚を起こすほどの「日常」を見せてきます。いかに彼らが毎日を楽しく過ごしていたかが、数十分に渡って表現されている。そしてベトナムから帰還した後のマイケル他兵士たちが日常に戻ろうとする場面も本当に長い。それに比べ戦地での場面は、恐らく物語の四分の一程(もちろんその短い時間の中で、彼らが味わった絶望、気が狂うほどの恐怖、そして怒りが存分に伝わってきます)。冒頭の楽しそうな結婚式の場面があるからこそ、その感情のギャップ、そして変化が短い時間で強く印象に残ります。
つまり、この映画はベトナム戦争映画ではなくて、とある戦争中における傷ついた人々のヒューマンドラマだと思うんです。いかに彼らが心身共に傷を負ったかがメイン。

『The Deer Hunter』は、兵士達の心理を、時間を掛けて描き出したヒューマンドラマ作品。戦争によって彼らの生活、そして彼ら自身がいかに変わってしまったかが良く分かります。他の戦争映画とは違って、日常と戦場、そして帰還した後の日常をメリハリを付けて作り上げてあるために、彼らの心理が私たちにぐっと伝わってくるのではないでしょうか。私はこの作品を見て、兵士達も戦争の被害者であるということを痛感しました。