荒野の狼

國民の創生の荒野の狼のレビュー・感想・評価

國民の創生(1915年製作の映画)
1.0
映画史を語る上では、巨匠グリフィス監督の作品で、おさえておきたい作品であるが、内容は黒人に対する人種差別やリンチ(私刑)を行ったクー・クラックス・クラン(KKK団)を、ヒーロとして扱って正当化している問題の多いもの。歴史が歪曲されており、視聴者に誤解をよぶ恐れがあるので、そうした歴史的誤りがあるとの認識なしには、鑑賞はすすめられない。DVDの商品説明などにも、内容の問題点について指摘が加えられるべき作品。
あるDVDのジャケットの人物は、彩色が施されKKKにあまり見えないのは問題。公開当時、この映画は、全米で空前の大ヒットとなり、ホワイトハウスでも上演され大統領はじめ、白人の優越と黒人の野蛮さを伝える内容を絶賛したという。反人種差別団体「全米黒人地位向上協会(NAACP)が上映反対運動を行ったが、映画の宣伝にしかならなかった。当時、黒人初の世界ヘビー級チャンピョンのジャック・ジョンソンが白人女性と結婚したために、全米中から迫害されたのは(そのために不当に逮捕されたりもした)、人種間の結婚に対する反対が強かったためで、この映画の目的も、人種差別にある。黒人役は、白人の役者が顔にペイントをして演じた。
1915年当時のアメリカの白人の間にあった人種差別を知る上では、歴史的に重要。映画の内容は、正当化できるものではない。2012年の映画”リンカーン”では、奴隷制度の廃止に尽力したヒーローとして描かれているトミー・リー・ジョーンズが演じたタデウス・スティーブンスは、”國民の創生”では、悪役にされている。100年の時を経て、米映画史においてスティーブンスの名誉は回復された。
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