最終作にして荒唐無稽なコメディが完全に振り切れて、不条理な現実を確かに映し出す寓話になった。
30年前の作品が、現在においてここまで真に迫ってくることに驚かざるを得ない。寺島進演じる青柳は、現代の腐敗した政治家や、あるいはQアノン、過当競争の中で過激化するYouTuberなどとダブらないだろうか。
ラストシーンは黒沢清監督のフィルモグラフィーの中で、風を伴う演出において最も端的で、美しく、悲しいものではないだろうか。
自分にとっての黒沢清監督の最高傑作の一つであり、また映画史に残るコメディシリーズである。5点満点では全く足りない。