AZ

スマグラー おまえの未来を運べのAZのレビュー・感想・評価

3.4
石井克人監督なので、独特の表現を期待していたが、ちょっと抑え気味だったかなと思う。ただ、十分個性に溢れていた。あまり個性を出しすぎると、大衆性がなくなってしまうのでしょうがない。ギリギリエンタメよりの映画になっていた印象。


石井監督お決まりの配役やノリにプラスし、豪華な俳優たちが参加している。よくこの作品にこんなにもいい役者さんたちを集めたなと思う。

期待していたのがやはり背骨と内臓のバトルシーン。漫画では異様な身体能力だったため、それをどう映像で表現するかを特に意識して見た。彼らのスピードをあえてスローモーションで表現する演出はカッコよく、ゆっくり動く体のうねりから、彼らの不気味さがうまく表現されていた。ただ、スローだけでなく背骨と内臓の激しいバトルシーンや、対ジョー戦での部屋中を這い回るスピード感も見事に表現されていた。

個人的に好きなのが、トラックから飛び出るシーン。漫画でも印象的なシーンだったが、漫画ファンの期待にしっかり答えてくれているなと感じた。

ただ、全体的に残念に感じてしまったのが、石井監督独自の特殊なカメラワークや演出が薄くなってしまったなと。『鮫肌男と桃尻女』を見た時の衝撃はもう味わえないのだろうか。あえて見せない演出、予定調和に行かないストーリー展開など。

例えば、鮫肌的に見せるのだとしたら、相手が銃を構えようとした瞬間にはもう腕が吹っ飛んでいる状態になっているとか。バトルシーンを全て見せる必要はなく、事後だけでもその凄さって伝わる。そういう演出を石井克人監督には期待していた。あっけない容赦のない演出ももっと欲しかった。

配役はよく、特に砧涼介役の妻夫木聡さん、ジョー役の永瀬正敏さん、背骨役の安藤政信さん、田沼組の河島役の髙嶋政宏さんなど。全体的にキャラクターの個性が抜群だった。

人は無意識に自分を演じている部分がある。アイデンティティは思い込みによって変化させることが可能だという。人間の本質的な部分やその可能性を、背骨を演じる砧涼介を通じて感じさせてくれる作品だった。


原作は真鍋昌平の『スマグラー』。真鍋さんは『闇金ウシジマくん』が有名だが、自分が初めて読んだ作品は今作。当時アフタヌーンに連載されていたの読んでいたのだが、強烈なキャラクターやストーリーによって強く印象に残っている。そして監督は石井克人。好きな監督の1人である。ただ、他の監督作品よりはインパクトは弱めだったかな。


○良い面
・配役
・アクションシーン
・キャラクターの個性
○悪い面
・関係性は少しわかりにくさがある(キャラ多すぎ?)
・背骨の性格が漫画より人間的(もっと冷徹さが欲しい)
・砧涼介の人生をもっと描いて欲しかった
AZ

AZ