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華麗なる激情のbeachboss114のレビュー・感想・評価

華麗なる激情(1964年製作の映画)
5.0
「ヤツの体には絵の具の血が流れている」だの「彫ってるんじゃない、石の中から解放してるんだ」といった陶酔系の名台詞の数々が違和感なくハマる荘厳な大作。

しかも、ただでさえド暑苦しいヘストンのおかげで、世間一般が抱く芸術家のイメージが一変する。ウジウジ悩むが肉体派。そこはさすがに彫刻家、絵描きと違ってドカチンな世界に納得。

今リメイクされたら間違いなく露骨にヌルっとした(スチームでオイリーでソフトフォーカスでYMCAな)描写が増えるはず。

足場から教皇を見下ろす芸術家、神と平和の名の下に戦争を繰り返す教皇、画家を一段下に見る彫刻家のプライド、美しい作品が仕上がるにつれて汚れていく風体など、相反する設定が随所に散りばめられているのも興味深い。

極まった尊敬と愛情は、嫉妬を超えて時に人をイケズにするが、その先には何物にも代えがたい恍惚(エクスタシー)が待っている。お互い素直になれなくて、ケンカしながら一大芸術作品を創り上げていく様子が微笑ましくも高揚する。

でもこれって、よくよく考えたら、映画監督とプロデューサーの関係をダブらせてるだけなんだけどね。

そして、オチの一言は、分かる人には予想通りとはいえ、やっぱり巧い。

【追記】
この映画に出てくる天井画は1980年代の修復前がベースなので薄汚いのが残念だが、そこはやむを得まい。
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