Maoryu002

シャインのMaoryu002のレビュー・感想・評価

シャイン(1996年製作の映画)
4.1
ピアノの才能に恵まれたデイヴィッドは厳しい父親の反対でアメリカ留学を諦めるが、イギリス王立音楽院へ留学し成功を収める。しかし、徐々に精神に異常をきたし表舞台から離れたデヴィッドはレストランでピアノを弾き始め、そこで自分を優しく受け入れてくれる人々と出会う。 

厳しい父親のもとで育ち、言いなりで「自分」がないデヴィッドは可哀そうで情けないが、今どきどこにでもいる誰かのように思えてならない。
その父親も実は誇れる「自分」がなく、自分を尊敬している子供に依存している。「自分」を誇示するために子供を手放せない姿は、愚かであり悲壮感さえ漂う。
そんな父親の愛情は本物だろうが、愛情の注ぎ方を間違えてしまっているとしか思えない。親なら誰もがやってしまいそうな間違いだ。そして、無抵抗の母親が子育ての間違いを決定的にしてしまったのだろう。

結局、デヴィッドにとっての「シャイン(輝き)」は何だったのか。
それはきっと、自分の才能を認めてくれる人でも、頼れる強い人でもなく、ただ自分を愛し受け入れてくれる人だったんだろう。
そんな人たちに囲まれてのラストのリサイタルは本当に幸せだったんだと思う。そして、残念ながらそこには父親の姿はないのだ。

オスカーを獲ったジェフリー・ラッシュは間違いなく素晴らしいが、脇を固める俳優も素晴らしい。
父親役のアーミン・ミューラー=スタールは、自分の中ではユダヤ人虐殺の戦犯を描いた「ミュージック・ボックス」や「イースタン・プロミス」が印象に残るが、この映画での自己嫌悪しながらも自分の流儀を崩せない男もいい味を出してた。
そして、ロンドンでの教師役のジョン・ギールグッドは当然ながら素晴らしい。シェイクスピアの舞台を見てる気分にはなったが。

想像してたよりもずっと面白く、心に響く映画だった。
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