Eike

クレイジーズのEikeのレビュー・感想・評価

クレイジーズ(2010年製作の映画)
3.2
1973年のクローネンバーグ版のオリジナルは未見です。

アイオワ州の小さな町が突如異変に襲われ恐怖が加速度的に拡大する様を描く「パニック・ホラー」。
もちろん低予算のB級ホラーですが気に入りました。
街を襲う異変の正体、「凶暴化」した住民の恐怖、権力側の血も涙もない無慈悲な対応etc.
どれをとっても過去の同様の作品の焼き直しではありますが、中々しまった仕上がりになっていてこの手の作品が好きなら楽しめると思います。

何よりこの愚直なまでのシリアスさを評価したい。
冒頭、カメラは穀倉地帯のど真ん中にあるちっぽけな町、オグデン・マーシュを流すように映して行きます。
高層ビルなどなくどこまでも水平方向に広がる空間が強調され、この町の置かれている状況がヒシヒシと伝わって来ます。
そして町の高校の野球部の試合中にショットガンを持って乱入してきた錯乱状態の男性を警察署長デビッド(T・オリファント)が衆人環視の中で
止む無く射殺するショッキングなオープニングシーン。
続いて署長が射殺した男性の家族に事情を説明して責められるシーンが盛り込まれ、本作がただショックシーンを繋ぐだけではなく、
登場人物の感情を掬いあげたシリアスな作風がはっきりと印象づけられております。
また、この苦いシーンが後半のショックシーンの引金になっているのも見逃せない巧い作りだ。

署長と医師である奥さんジュディ(R・ミッチェル)は町の住人に異変が広まっていることに気づくのだが時すでに遅し。
二人は地獄と化した町から決死の脱出行を繰り広げるのだが・・・。

凶暴化した住人の行動はほとんどゾンビですがそこに事態収拾に動く軍事行動が加わって阿鼻叫喚となってゆく辺りは「28週間後・・・」等にも似てますが、このど田舎の方がより「リアル」な孤立感があり効果的です。
殆ど一直線でパニックと恐怖が拡大して行く様をまざまざと見せつける事に徹した潔さが本作のシャープな印象を巧く決定づけていると思います。

ホラーファンにはおススメです。
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