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アスパラガス/スーザン・ピット ドールハウスの魔法のくりふのレビュー・感想・評価

4.5
【淫夢にあそぶ】

スーザン・ピットが(当時)本年6月に亡くなり、幾つか追悼上映あったものの行けなかった。オンラインで久しぶりに再見。

短編アニメの傑作を挙げろと言われたら、ベスト3には入れたい思い入れ濃厚作。レトロな意匠は混じっているが、何度見ても古びない。作者の欲望に忠実だが、普遍的なものを併せ、ヌルヌル手繰り寄せるからだろう。

要となるアスパラガスは、明らかにペニスを指しているが、本作が欲望するのは男の身体ではなく、女の穴を埋めてくれる、オモチャとしての淫具だ。それも、絶頂に達したいわけでもなく、弄ぶことが楽しいらしい。

本作のヒロイン?は、顔を隠したまま、揺蕩うのがお好きらしい。悪戯心も豊富で、パンピー向けに感染させる、夢のオモチャも鞄にいっぱい詰めている。まるで、堕落版メリー・ポピンズだ。

とはいえ、まったく理屈からはかけ離れた映画で、下手に解釈など入れず、いっしょに揺蕩えばいいと思う。

クレイアニメで巧妙に世界観を隔てられた、言葉通りの、夢を見させてくれる劇場も登場するが、映画館も元々、観客の想像力で遊ばせてくれる、こういう場所だったんじゃないかなあ。最近のはやたら説明されたり、作者の思い入れだけを押し付けたり、ばかりだからね。

1978年作だが、本作以降、ここまで中毒できる短編アニメに、なかなか出会えない。一方、自分が知らない映画は星の数ほどあるのだから、もっと探しに行かないと…という反省も。ネットで映画探検ができる時代なのだからね。

ともあれ、スーザン・ピットとは違う、誰でもない個性を持つ、新たな作り手の出現に期待します。

<2019.12.17記>
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