荒野の狼

KG カラテガールの荒野の狼のレビュー・感想・評価

KG カラテガール(2010年製作の映画)
4.0
ストーリーに現実味などはないが、空手アクションは高レベル。前作のハイキックガールと比べると、父親役の中達也が殺されるところから始まるので、武田はうしろだてがなく、やっと一人立ちという構図で、堂々の主演で強さをみせる。衣装もセーラー服と胴着だけだった前作にくらべると本作では多少のバリエーションがある。武田のセーラー服に黒帯をつけたジャケットは格好いいが、このシーンは映画にはなし。
本作のアクションの目新しいものとしては1)冒頭の悪漢二人を足をからめて立った状態で関節を極めてみせるシーン、2)二人の大人の頭に載せたペットボトル二本を瞬時に蹴り落とすシーン、3)ヌンチャクで棒術に応戦するシーン。
共演の平松陽菜を売り出そうという目的か、平松の格闘シーンが多く(武田とほぼ同じくらい)、その分、武田の格闘シーンは少なくなっている。平松の格闘シーンも素晴らしいが、まだ体格が小さいので強敵との対決にはやや説得力を欠く。武田との対決でキックを何度かクロスさせるシーンは往年のブルース・リャン対倉田保昭を彷彿させる素晴らしさ、また、悪の殺人拳で大人の空手家をつぎつぎに冷徹に倒していくなんとも不気味な強さは本物。武田と並ぶとヒーローもので、二人のヒーローの共演(ダブルライダーのような)を見ているような楽しさがある。
共演者で素晴らしいのは杉澤一郎の足首から先がしなるような蹴り。杉澤は3年連続で2011年も日本国際空手道選手権大会で優勝したということだが、すさまじい迫力。杉澤は武田との直接対決がなく対決は平松とのみに終わってしまったのが残念。最強の敵を演じた巨漢リチャード・へセルトンもスピードや迫力は本物。武田とのからみでは、常に片方が攻撃して片方が受けるとういうパターンで、激しい蹴り合いのような場面がなかった点が惜しまれる。
一番の名シーンはエンディングに流れるリハーサル風景。ここではスローモーションもなく、ときにはプロテクターをつけ、本当に飛んで、蹴り合っているのがわかる。本物のアクションはストーリーも説明も抜いたこのメイキングにあるといっても過言ではない。ジャッキー・チェンの映画でNGがエンディングの売りだったが、武田の映画はエンディングのリハーサルシーンが名物になる予感をうける。
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