メイマーツインズ

麦の穂をゆらす風のメイマーツインズのレビュー・感想・評価

麦の穂をゆらす風(2006年製作の映画)
4.8
【名作を観ようシリーズNo.96】

《愛するものを奪われる悲劇を、なぜ人は繰り返すのだろう。》

”わたしはダニエル・ブレイク〟”家族を想うとき〟のイギリスの巨匠ケン・ローチの最高傑作‼︎

この作品を初めて観たのは約5年前…
魂を揺さぶる映画とよくいうけど、この作品こそふさわしい表現だ‼︎
魂を揺さぶられすぎて、しばらくは余韻から抜け出せなかった。
この作品を購入せずしてどうするという気持ちになり…。
ソフト所有で再鑑賞作品。

日本人には馴染みが薄いアイルランド独立戦争〜内戦を舞台にしている。イギリスとの独立戦争で団結していた同胞が内戦となり、家族・友人が敵味方に分かれて殺し合う不条理を描いた物語。

人間の本質を描く天才・ケン・ローチのリアリズムな演出に、アイルランド出身のキリアン・マーフィーの入魂の演技が溶け込み、切なくもパワフルな作品となっている。

平常心ではいられないクライマックス、そしてラストに心が打ちのめされる…

建国以来、モンゴルやロシアの脅威にさらされながらも、第二次世界大戦まで他国に統治されることなく独立を維持してきた日本。今の平和を謳歌する私たち日本人からすると独立国家日本は当たり前のように思える。
が、しかし世界基準からすると当たり前ではない。

真剣に民族のこと、国のことを憂い、イデオロギーの対立で兄弟、友人が殺し合う悲劇。
日本でも明治維新〜西南戦争がそうだったように…。
ひとつの民族が独立し、国家として繁栄していくための対価はとてつもなく大きい。
そんなことを、この作品は教えてくれます。