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鉄腕アトム 宇宙の勇者のgintaruのレビュー・感想・評価

鉄腕アトム 宇宙の勇者(1964年製作の映画)
3.8
テレビ版3話(第46話「ロボット宇宙艇」、第56話「地球防衛隊」、第71話「地球最後の日」)の再編集版。第56話はカラー、第71話は一部カラーとなっている。第56話は製作当時試験的にカラーで製作されたが放送時はモノクロだった。
1964年製作である。まだアポロは月まで行っておらず、キューブリックの「2001年宇宙の旅」も製作されていなかったころの作品である。
当時の子供向けのアニメではあるが、随所にSF的要素がちりばめられているのはさすがであり、また、痛快SF活劇の裏に大人も考えさせられる隠れたテーマがあるのも見逃せない。
第46話では子供を戦争で失った女独裁者の子供への愛と戦争への復讐心が、第56話ではロボットを差別する人間との対立と和解が、第71話では自爆することを運命づけられたロボットの心の葛藤などが描かれている。
中でも圧巻なのは第71話で、1か月後に地球に衝突する小惑星の不気味に接近してくる様子が赤色のパートカラーをうまく使って描かれており、接近に伴って荒れてくる地球の自然と人間の混乱ぶりの描写もよくできている。また、自爆ロボットのベムが、混乱の中で娘を亡くし気がおかしくなったおばあさんと出会い、娘の代わりとして暮らし、そうした地球人との触れ合いを通して自分を犠牲にしてでも地球を救いたいと心が変わっていく描写などは思わず涙ぐんでしまった。この話は別の映画としてもリメイクできそうなくらいだ。ちなみに鉄腕アトムとしてのリメイク版はあるようだ。

第46話のロボット宇宙艇では複数のロボットが合体して一体のロボット宇宙艇になるわけだが、巷間よく言われるのとは違って、実はこれが最初の合体ロボなのではないのだろうか?
第56話の地球防衛隊ではアトムが制服を着るのだが、カラー版ということもあってこのビジュアルを昔よく見たように思う。なぜ見慣れたパンツ1枚の姿じゃないのかと違和感を覚えたものだ。マーブルチョコのオマケか何かで手に入れたカラーポジのようなものを持っていたように思う。
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