荒野の狼

雪国の荒野の狼のレビュー・感想・評価

雪国(1957年製作の映画)
5.0
1957年の134分の映画。小説の冒頭の有名な「雪国の長いトンネルを抜けると雪国であった」のナレーションはない。小説は未読で映画を鑑賞。最初は当時24歳の岸恵子演じる駒子と池辺良のなんともないじゃれ合いが続いたりするのだが、これが意外に飽きない。前半はとにかく岸のかわいらしさが際立つ。妻帯者の池辺にほれてしまう岸であるので、だらしない池辺をみているとどう感情移入をしていけばよいのか、当初は判断がつきかねるが、ピュアで恋愛に生きがいを見出している岸に寄り添うと、芸者という特殊な事情とは関係なしに岸に共感できる。中盤の岸の三味線の演奏シーンは長いが、三味線の音に張り詰めた感情がこめられ、三味線の音と、岸の表情だけで長尺を見せてしまう名場面。本作では、池辺に岸がお酌をするシーンが頻回登場するが、こうしたシーンにも日本の家庭・伝統文化のようなものが感じられる。他には当時の豪雪ぶりが見所で、いまではこんな深雪はないのではとおもわせるシーンが随所にあるのはそれだけで一見の価値で日本の失われた原風景を見る思いである。
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