スギノイチ

美しき冒険旅行のスギノイチのレビュー・感想・評価

美しき冒険旅行(1971年製作の映画)
3.5
映像自体は凄く叙情的なのだが、良くも悪くも陶酔する事を許してくれない。
美しい動物の映像が流れたと思ったら、次のカットではその死体に蛆虫が湧いている様が映される。
また、明らかに性器を連想させるべく撮られた卑猥な形状の樹木をドヤと映してきたかと思えば、いきなり父親の死体がカットバックしたりする。
叙情的な映像をゆったり流しながらも、常に生(性)のイメージと死のイメージをワンセットで描写してくる。
客観性の極致ともいえるが、ほとんど嫌がらせの域である。

美しい自然も無機質な都会も、どちらも違うベクトルに不穏なイメージで描かれている。
終盤の現地の少年とのエピソードは悲劇の恋なんだろうか。
ここまで齟齬のあるディスコミュニケーションを見せられると、滑稽を通り越して不気味だ。
少女からすると少年の踊りは狂気じみた奇行でしかなかったろうけど、少年からしたら感情を一切シャットダウンした少女はモンスターに見えただろう。
少年も少女も怖すぎる。
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