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陽炎座のbennoのレビュー・感想・評価

陽炎座(1981年製作の映画)
4.8
鈴木清順監督『大正浪漫三部作』の2作目…。

泉鏡花の原作を映画化…。(読み辛く断念っს)

前作の『ツィゴイネルワイゼン』より一層清順ワールドもパワーアップして、蠱惑的な夢や幻想というよりも妖艶でサイケな"異界"という領域に足を踏み入れ、この世とのふたつの世界を行き来する…怪奇譚。

1926年…大正と昭和の境目、ファッションや音楽もモダンと和風の境目の和洋折衷時代。

新派の劇作家である松崎(松田優作)が品子(大楠道代)とイネという二人の女性に翻弄されます…しかしイネは彼と出会う前、既に亡くなっていました…。

そして品子は彼に手紙を残します…
「三度お会いして、四度目の逢瀬は恋になります。死なねばなりません。それでも、お会いしたいと思うのです。」

品子は死に急ぎ、松崎と心中を願っているのでしょうか…?

個々の場面でのドラマはとてもしっかりとしたストーリー性を持っているのですが、次の展開で取り止めもなく飛躍します…主人公目線でパラレルワールドの中を浮遊、異界と現世を行ったり来たり…。

何と言っても絢爛豪華な芸術性が素晴らしい!! その世界観にどっぷり酔いしれて下さい。

張り巡らされた屏風絵、芳年の無惨な浮世絵、何より衣装の着物に目を奪われます。幽霊を思わせる淡い色合いのぼかし染めの着物。

見事なのは、三度目の逢瀬での芸術的なセックスシーン(?!) …。朱色の毛氈が既にエロティシズム….黒地の帯に総絞りの朱の帯揚げ…大正浪漫にありがちな裏地も朱色…ため息しか出ません…。

また、アナボル(革命家)の和田(原田芳雄)と人形師(大友柳太朗)のシュールな『人形裏返しの世界』…とぼけた笑いもあり、まさに"生"のリアリティに満ちていました。見ものです!!

終盤には圧倒的な展開…大好きなシークエンスでもあり、この物語の肝でもあります。

それは…"陽炎座"での子供芝居…そして品子を人形に見立てた人形浄瑠璃…。大楠道代の美しい舞に息を呑みます…とにかく美しい…!! 昔嗜んだことのある耳馴染みのある長唄三味線…久しぶりに爪弾かなければ…っსと思いつつ、やはりお三味線の音色は大好きで落ち着きます!

そして圧巻の鬼灯のシーン…天晴れです!!

…とは言うものの、鬼灯というものがあまりよく分かリませんでした…ミニトマトのようで美味しそう〰︎! …なので鑑賞後に祖母に尋ねました。お盆に死者を迎える提灯として飾られるもの…ほうずき市…それからこの作品の冒頭から「ブーブー」という奇妙な音…鬼灯の実の中身をくり抜き口の中で鳴らす音…。

鬼灯の花言葉は…『偽り』『ごまかし』『私を誘って下さい』だそうです。まさに!! なるほどです!!
…それを知って再鑑賞しますෆ*
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