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10億分の1の男のTAのレビュー・感想・評価

10億分の1の男(2001年製作の映画)
3.3
 フェデリコ(エウセビオ・ポンセラ)は幼い頃に命を救ってくれたサム(マックス・フォン・シドー)から“運”を奪う能力を授けられ、以来彼の経営するカジノで客の運を奪い取る仕事をしながら彼に仕えてきた。
 だがある日、彼はサムのもとから去ろうとしたためその能力をサムに吸い取られ、袋叩きにされ追い出されてしまう。
 その7年後、強盗犯トマス・サンス(レオナルド・スバラグリア)は逃亡の途中で飛行機事故に遭い、唯一の生存者として救助されていた。入院先の病院で警察に身柄を拘束され、警察の監視のもと入院を続ける羽目になるが、ある日保険外交員を装ったフェデリコが事故の保険金請求の為のサインを求めに病室に現れた。
病室で2人きりになったとき、フェデリコは突然カードを切り始め、こう言う。
「エースを引いたら、今夜逃がす。」
そこから彼等は「運」を使ったゲームにエントリーしながら荒稼ぎしていくのだが、フェデリコの目的は他にあった...。

「運」という抽象的な存在をテーマにした異色の作品。「運」で勝敗を決め、勝った者は全てを手に入れるが、負けた者は全てを失う。
「運」で尊敬を得るため、時には命さえ賭ける様は滑稽でありながら目を離せない緊張感がある。 期待せずに借りたが、すっかりこの作品のファンになってしまった。
作品全体に漂っている危うい雰囲気がまたこの話によく合う。 監督は、この作品の数年後「28週後…」のメガホンを取ることになるフアン・カルロス・フレスナディージョ。
サムを演じるマックス・フォン・シドーは「エクソシスト」でのメリン神父役があまりに印象的だが、この作品でも他を寄せ付けない存在感を示し、過去の役柄に負けない説得力を滲ませていた。 彼がトマスと対峙し、自らの「運」の原点を語る場面には特別な映像や過度な演出はなされていないものの、その緊張感は独特な空気を漂わせ、全体として不思議で魅力的な人間ドラマに仕上げていた。

登場人物には、一度も怪我をしたことが無い闘牛士や、交通事故で生き延びた女、2階から飛び降りて大丈夫だった男だったりビンゴに当たった者など、幸運の種類もレベルも様々。
挑戦するゲームも冷静に考えれば笑える事を命懸けで真剣にやっているんだからまた面白い。

好きです。
『大』は付かないけど。
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