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炎の人ゴッホのtheocatsのネタバレレビュー・内容・結末

炎の人ゴッホ(1956年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ネタバレ
カーク・ダグラス圧巻の狂いゆくゴッホ像

見るたびにヒリヒリした痛みに囚われてしまうが、それでも数年おきに見返したくなる作品。

落ちこぼれ宣教師として貧しい炭鉱村に派遣される場面からダグラス演じるゴッホはどこか異常な熱を帯びた狂気の片りんが垣間見える。

宣教師の夢は潰え実家に帰って絵を描き始めたまでは良かったが、従姉の未亡人にあまりに性急に恋慕し攻寄る場面は明らかに異常性むきだし。

結局家も出ざるを得ず、洗濯女の売春婦とのほんの束の間の団欒もゴッホの生活力のなさからあえなく破局。

しかし、弟テオが救いの手を差し伸べパリにて同居生活および画業も再開。
画家仲間もでき順風吹き始めたかに見えたが、画商テオをもってしてもゴッホの絵は売れない。

テオのアパートも飛び出し、ポール・ゴーギャンと共にアルルでの絵画制作に全てをかけたゴッホだったが彼の精神は取り返しのつかないほど蝕まれていた。。。


多少の誇張表現はあるだろうが、ゴッホ関連の著作をある程度読破した経験から言えば本作品はほぼ実際のゴッホ像を描き切っていた印象。

主演カーク・ダグラスは迫真性に満ち、ゴッホの絵を散りばめた映像も印象深く、特に最後の絵となった麦畑に大量のカラスの場面は実際の絵とのマッチングが見事すぎるほど。

ラスト死にゆくゴッホに「可哀そうな兄さん・・」とうなだれるテオの場面にはこちらも毎回哀しみに沈まざるを得ない。
しかし映画外の話になるが、そのテオも兄の後を追うように程なく死んでいるので、実は一番可哀想なのはテオであり、彼の奥さんと子供というのが悲しみを倍加する。

個人的には一時期の印象派風を除いてはゴッホの絵は正直敬遠している。
でもこの映画はそんな個人の嗜好を超越した「狂気と凄み」が充溢しているのは間違いなく、だからこそ重い気分になるのが分かっていても数年おきに見返したくなるのだろう。

5.0の五つ星


この映画のゴッホ像とは一味違うが、ゴッホの生涯をモチーフとしたエイノユハニ・ラウタヴァーラ作曲の交響曲第6番を聴いてみるのも一興かも。※動画あり
実生活における悲惨苦渋苦悩を経た後、精神的・霊的には光あふれる天の国に昇天したかのような安寧に満ちた終楽章が印象的。
022106
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