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カラーズ 天使の消えた街のnetfilmsのレビュー・感想・評価

カラーズ 天使の消えた街(1988年製作の映画)
3.6
 深夜のロサンゼルス、煌々と輝くライトの中、静まり返ったギャング「ブラッズ」のアジトに対立するストリートギャング「クリップス」のメンバーが突如襲い掛かる。「ブラッズ」のクレイグはあっという間に射殺され、彼らはいつものように散りじりに逃げ去るのだ。80年代後半、ロサンゼルスの犯罪率は増加の一途をたどり、主に赤を基調とするブラッズと青を基調とするブラッズが20年に及び抗争を繰り返していた。仲間が死ねば「復讐」と称し報復の銃弾が飛び交い、更なる悲劇を生む悪循環で、ロサンゼルス市警のギャング対策班CRASHに配属された新米警官マクガヴァン(ショーン・ペン)は正義を信じ、時に手荒な捜査でこの街の治安を守ろうとするが、定年を控えるベテラン警官のホッジス(ロバート・デュヴァル)はギャングとの対話を重視し、麻薬を所持していた少年までも解放する温和な捜査手法を取り、新米警官を心底イラつかせるのだ。その後、解放された少年(グレン・プラマー)の名前が麻薬密売事件の容疑者として浮上し、マクガヴァンは普段に増して手荒な捜査を進め少年を逮捕する。

 ここには80年代後半の最も治安の悪かったロサンゼルスの混沌とした様子が、殆どそのままに映し出される。おそらく「ブラッズ」も「クリップス」も顔が割れたら困るだろう主要なメンバー以外はエキストラとして多数出演し、血みどろなギャング抗争は半分ドキュメンタリーのような圧倒的なルポルタージュとなる。監督であるデニス・ホッパーはこの街のリアルを描くために、有名な俳優を起用し、極めて図式的なギャング抗争として本作を描けなかったのだろう。それゆえ今作は勧善懲悪の物語としてはそれ程良く出来ているとは言えない。ただ育った時代と場所とがその後の人格形成を左右するアメリカの警察官たちの実情をつぶさに伝えるのだ。新米警官のマクガヴァンは汚れた街に染まり、暴力には更なる暴力で対抗しようとするが、ベテラン警官のホッジスはその手荒な捜査を赦さない。郷に入っては郷に従えという言葉にもあるように、濁った水の中ではここでしか生きられない人物たちが雨後の筍のように出て来るのだ。すっかり疲れ切った老兵を演じるロバート・デュヴァルの渋みが絶品で、刑事かチンピラか二者択一しか能がない粗暴なショーン・ペンを1人の人間として導いて行く。図らずも今作は80年代後期のHIP HOPの到達点としても機能する。それはN.W.Aの『ストレイト・アウタ・コンプトン』と真に地続きの世界だ。
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