田山信行

ICHIの田山信行のレビュー・感想・評価

ICHI(2008年製作の映画)
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女版座頭市という企画は面白い。ジャンル問わずの主演作に邁進する綾瀬はるかの勢いたるや。2000年代、時代劇の灯火が消えゆく中でどうにか新たな切り口を、と模索していた一作。TBSが製作に名を連ねているので『あずみ』からの流れもあったのかもしれない。

瞽女ながらに居合の達人。だがそれ故に生き方を違えることとなってしまう、か弱き存在の市。元の座頭市がバケモノじみ過ぎた存在だったとはいえこの役に何の魅力があろうか。殺陣にも特に目を見張るものもなく。

他者との関わり合いを避ける故に物語の渦中にも殆ど関わらない。唯一濃い関係性を結ぶ侍も、敵の野党の首魁までもが同じく生き方を違えた者たち。そんな奴らの泥試合でドラマも盛り上がらず。座頭市をまんまやっても男女逆転させた意味がないとはいえただ怠くなっただけである。その中でも活き活きしているのは窪塚洋介と竹内力。

元々はCGクリエイターの曽利文彦監督がVFXに頼ることなく丁寧にちゃんと映画を撮ろうとする姿勢は好きだが、それが面白さに結実するかどうかはまた別の話。新たな時代劇の魅力を創出することも叶わず……といった感じ。

『彼女はサイボーグ』に続いて山口祥行さんが綾瀬はるかにズタボロにやられる役回りなんだけど、何の因果で???
田山信行

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