オーウェン

ブルースチールのオーウェンのレビュー・感想・評価

ブルースチール(1990年製作の映画)
4.0
銃がこんなにも魅惑的でエロティックな存在だなんて、今まで全然知らなかった。
そして、一人の人間の運命ぐらい、あっさりとねじ曲げてしまうほど妖しく美しい武器だということも。

このキャスリン・ビグロー監督の「ブルースチール」は、そんな拳銃に魅入られてしまった男と女の物語だ。

舞台はニューヨーク。他のどこでもなく、24時間緊張を強いられ、孤独な人間の多いこの街だからこそ起こった出来事だ。

主役のジェイミー・リー・カーティスが実にチャーミングだ。
タフで腕のいいポリスウーマンでありながら、素顔は少女のようにナイーヴな女性を、まるで自分の地であるかのように演じきっている。

骨格美とでも呼びたくなるようなスラリとした肉体を、ブルーの制服に包んだ彼女の凛々しさといったら、比べようもないくらいに決まっている。

メーガン・ターナー(ジェイミー・リー・カーティス)は、ポリス・アカデミーを卒業して生涯の夢だった警察官となった。
パトロールの第一夜、スーパーマーケットの押し入り強盗を発見した彼女は、正当防衛で強盗を撃ち殺すのだった。

しかし、犯人の持っていた拳銃は、事件現場から忽然と消えていたのだ。
そして、動機なき殺人事件が発生する------。

アンバランスな魅力をたたえた彼女が、目の前で強盗を撃ち殺す。轟音、硝煙の匂い、飛び散る鮮血、そして死体。

毎日、神経をすり減らして都会で生きてきたロン・シルヴァー扮するビジネス・エリートが狂ってしまったのも、決して不可思議なことではないと思う。

なぜなら、我々は拳銃で人が殺される瞬間を目撃したことはないのだ。
だから、もし、実際にそういう場面に出くわした時、自分が正常でいられるかどうかなんて、いったい誰が断言できるというのだろう。

そのあたりをヒリヒリするような皮膚感覚で、しっかりと描くことで、この映画は単なるアクション映画とは一線を画していると思う。

ブルーの光に彩られた夜のシーンが、実に美しい。
数分後、わが身にどんなことが起こっていてもおかしくはないようなマンハッタンの夜を、ハリウッドを代表する女流監督のキャスリン・ビグローは、テンション高く、それでいて幻想的に描いている。

とにかく彼女の作る映画は、ストイックでエロティックで、そしてテクスチュアーを感じさせる絵作りになっていて、いつ観ても私は魅了されてしまうのだ。
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