三四郎

戦争と人間 第一部 運命の序曲の三四郎のレビュー・感想・評価

3.5
長編にも関わらず、飽きることなく見ることができる。
比べるのはおかしいかもしれないが、『人間の條件』より断然おもしろい。辛く苦しい残酷なシーンが『人間の條件』よりもかなり少なく、様々な社会階層の人間と思想が描かれているからだろう。故に非常に興味深い。
新興財閥・伍代家を中心に、日本、満洲、中国を舞台としてビジネス、外交、戦争…実に壮大なスケールだ。トルストイの『戦争と平和』を思わせる。
ステッキが刀に早変わりするといった小道具の使い方もキザで良い。
令嬢・浅丘ルリ子が陸軍軍人・高橋英樹に「貴方になら斬られてもよくってよ」と言ってのけるシーンが印象深い。当時の財閥令嬢なら、きっと平気で言ったかもしれない。

赤の兄が出征前夜に弟に言う科白。
「信じるなよ 男でも女でも 本当によくわかるまで
わかりが遅いということは恥じゃない
後悔しないためのただ一つの方法だ」
もし、この会話の前に、弟が「兄さんの探してた(待ってた)女の人だけど、結婚してたよ」と言わなければ、「信じるなよ」の後、強調するかのように「男でも女でも」とはならなかったかもしれない。
三四郎

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